ハナガガシ

ハナガガシ（葉長樫）

ハナガガシ（学名：Quercus hondae）は、ブナ科コナラ属アカガシ亜属に分類される常緑高木です。その名の通り、カシ類の中では最も細長い葉を持つことが特徴で、別名サツマガシとも呼ばれています。この木は、宮崎県、鹿児島県、大分県、高知県、愛媛県といった限られた地域に稀に分布しており、かつては熊本県にも自生していましたが、現在は絶滅したとされています。

形態

ハナガガシは雌雄同株であり、主幹は真っ直ぐに伸びて樹高は20メートルに達します。幹の樹皮は暗灰色で、浅いひび割れが特徴的です。葉は互生し、濃い緑色でやや厚く、革のような質感があります。葉の大きさは長さ7～15cm、幅1.5～3cmで、先端は細く尖り、基部はなめらかに葉柄につながります。葉柄は約1cmで、葉の中央から先端にかけてやや鋭い鋸歯が見られます。花は風媒花で、4～5月に開花し、新枝の下部から雄花の花穂が垂れ下がります。果実はドングリで、細長い卵型をしており、殻斗は深い杯型です。ドングリは翌年の10～11月に熟します。

天然記念物

ハナガガシは、その希少性から、以下の場所で天然記念物として指定されています。

国指定

堅田郷八幡社のハナガガシ林 - 大分県佐伯市大字長谷5 堅田八幡宮境内

都道府県指定

八坂神社のハナガガシ林 - 大分県佐伯市江良 八坂神社境内

市町村指定

松尾八幡宮のハナカガシ自生林 - 高知県土佐市高岡町乙 松尾八幡宮境内
福瀬神社のハナガガシ - 宮崎県日向市東郷町山陰 福瀬神社境内

保全状況評価

ハナガガシは、環境省レッドリストにおいて絶滅危惧II類（VU）に指定されており、絶滅の危機に瀕しています。各県における保全状況は以下の通りです。

愛媛県：絶滅危惧IA類（CR）
高知県：絶滅危惧IA類（Ci）
熊本県：絶滅危惧II類（VU）
大分県：絶滅危惧IB類（EN）
宮崎県：準絶滅危惧（NT）
鹿児島県：絶滅危惧II類（VU）

これらの評価からも、ハナガガシの保全が急務であることがわかります。

参考文献

米倉浩司、梶田忠「BG Plants 和名−学名インデックス（YList）」
いわさゆうこ、八田 洋章「どんぐりハンドブック」（文一総合出版）
* 徳永 桂子「日本どんぐり大図鑑」（偕成社）

ハナガガシは、その独特な形態と希少性から、生態学的に重要な樹木です。これらの情報を元に、ハナガガシの保護活動への理解が深まることを願います。

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