カシ

カシについて

カシ（樫、橿、櫧）はブナ科に属する常緑性の高木の総称です。狭義にはコナラ属の常緑種を指しますが、同じブナ科に属するシリブカガシ（マテバシイ属）や、シイ属（別名クリガシ属）も含めてカシと呼ばれます。学術的には、アカガシ亜属（Cyclobalanopsis）をコナラ属から独立させてアカガシ属と見なすこともあります。また、クスノキ科においても、葉の特徴からカシと呼ばれる樹木が存在しています。

地域によってカシの指す種が異なります。たとえば、関東地方ではシラカシ、東海地方ではウラジロガシ、南紀や四国ではウバメガシ、山陽地方ではアラカシ、四国から九州にかけてアカガシやイチイガシが主なカシの種類として知られています。

特徴

カシは常緑性を持ち、明るい光沢を持つ葉が特徴です。多くの種に鋸歯（葉の縁のギザギザ）があります。アカガシ亜属は、温帯南部の湿潤地域に約150種が存在し、日本では関東地方以南に多く分布しています。北限は太平洋側では宮城県、日本海側では新潟県に達する種もあります。一方で、コナラ亜属の常緑カシはやや乾燥した温暖な場所で見られ、南ヨーロッパやアメリカ大陸にも広がっています。

カシの花は晩春から初夏にかけて咲きますが、例外的にシリブカガシは秋に花をつけることが特徴的です。この植物は狭義のカシ類とは異なり、マテバシイ属に分類されているため、英名ではJapanese oakと呼ばれます。また、果実はドングリ（団栗）と呼ばれ、開花した年に熟すものと、2年目に熟すものがあります。

アカガシ亜属の特徴としては、殻斗に環状紋が現れることが挙げられます。カシの木材は非常に硬く、器具や建築材料として重要視されています。

照葉樹林と里山

カシ類は照葉樹林で重要な構成種の一つであり、様々な常緑広葉樹林に位置しています。西日本ではアラカシが優勢な森林を形成し、海岸線ではウバメガシ、ブナ林帯近くではアカガシがよく見られます。木材の伐採によって、その後はナラ類の落葉樹林やアカマツの混交林茂り、いわゆる里山が形成されやすくなります。

オークとの関連

英語において常緑性のカシはライブオーク（live oak）と呼ばれています。日本で一般に「ナラ」とされる植物は、ナラ属の落葉性の樹木が含まれ、多くの文献や作品ではカシとして翻訳されていることがありますが、正確にはナラとは異なる分類です。

利用法

カシは、防音効果を持つため民家の垣根として広く植えられています。また、常緑樹であることから防風林としても機能し、生葉や生木は燃えにくいため隣接する家屋の火災防止にも寄与します。

木材としては、非常に堅く、粘りがあり強度も高いです。そのため、建築用材や道具の製作に使用されますが、加工が難しかったり、乾燥が困難な点には留意が必要です。具体的には、欄間や敷居、鉄道の枕木、橋、道具の柄に用いられ、また武道用具や和太鼓の桴など多様な用途があります。

歴史的背景

1904年の日露戦争では、日本軍の砲車にカシ材が使われ、その強さがロシアの代用品と比較されました。また、日中戦争が続く中、カシ材は戦局において軍需品や内地での利用に制限され、特定の用途に使われることとなりました。

多くの市町村ではカシをシンボルツリーとして採用しており、地域の象徴として親しまれています。

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