ハナミョウガ属

ハナミョウガ属（Alpinia）について

ハナミョウガ属（Alpinia）は、ショウガ科に属する植物のグループです。この属は、その美しい花で知られ、多くの種が観賞用として栽培されています。園芸分野では、学名のカタカナ読みである「アルピニア」という名前もよく使われます。

概説

ハナミョウガ属には、大きな葉が並んだ偽茎の先端から長い花序を出し、多数の花をつける種が多く含まれます。これらの植物は、アジアの温暖な地域から太平洋諸島にかけて広く分布しており、その種類は多岐にわたります。ゲットウのように観賞用に栽培されるものもあれば、香りが強く薬用とされるものも存在します。属名は、イタリアの植物学者P. Alpinに由来しています。

特徴

ハナミョウガ属の植物は、多年生の草本であり、地下には根茎があります。葉には長い葉鞘があり、これらが互いに巻き付きあって地上に立ち上がり、偽茎を形成します。葉身はカンナの葉のように丈夫で大きく、偽茎に2列互生の形でつきます。葉身と葉鞘の区切りには葉舌があります。葉身の形は長楕円形から披針形です。

花は偽茎の先端から伸びる花茎につき、円錐花序または穂状花序を形成します。花は、唇弁だけが大きく目立つのが特徴です。果実は球形で、柔らかいかやや固く、多肉質で通常は裂けません。

花の構造

ハナミョウガ属の花の構造は非常に特殊です。基部には筒状の萼があり、その中から雄しべと雌しべが束になったものが、まるでラン科の蕊柱のように伸びています。背面側には細い花弁、下面側には大きな唇弁、そして背後に小さな花弁が2枚あります。萼片は先端で小さく3つに裂けます。花弁は筒状になったものが先端から裂けたもので、花弁の筒状部は萼片よりも短いです。

特に注目すべきは、唇弁に見える部分が実は雄しべであるということです。これは、稔性を失った仮雄しべで、本来は内外3本ずつの計6本あったものが、外の3本のうち1本が完全に退化し、残りの2本が癒合して幅広く発達したものです。内側の雄しべ3本のうち、2本は稔性を失って退化し、最後に残った1本の雄しべの基部に小さな付属体として残るか、あるいは消失します。ラン科の蕊柱のように見える部分は、唯一の稔性のある雄しべで、先端に葯があります。その柄に当たる花糸は扁平で幅広くなっています。

雌しべの花柱は雄しべの下側に沿って伸び、葯の部分でその中心に挟まるようにして、先端から柱頭を出します。花序には苞がありますが、これは膜質で直ぐに脱落します。

分布

ハナミョウガ属は、アジアの温暖な地域から太平洋諸島にかけて分布しており、約250種が知られています。特にニューギニアには多くの種類が生息しており、その他には西アフリカに2種のみが確認されています。

分類

ショウガ科は50属1100種を含み、その中でハナミョウガ属は、子房が3室で、唇弁以外の仮雄しべが退化している点で、ハナミョウガ連にまとめられています。この属は、蕾を萼や苞が包む部分の特徴から、アルピニア属、ゲットウ属、ハナミョウガ属（狭義）の3属に細分化する説もありますが、一般的にはこれらは亜属として扱われ、別属とはみなされません。

日本では、ハナミョウガが関東以西の本州に、アオノクマタケランがより南の地域に分布しています。南西諸島や小笠原には、さらに多くの自生種が存在し、ゲットウなどの栽培種も見られます。

代表的な種

日本に自生する主な種には、チクリンカ、シマクマタケラン、イリオモテクマタケラン、クマタケラン、アオノクマタケラン、ハナミョウガ、イオウクマタケラン、ゲットウなどがあります。また、日本には自生しないものの、シロフゲットウ、ナンキョウ、コウリョウキョウ、ヤクチ、レッド・ジンジャー、フイリゲットウなどが知られています。

利用

ハナミョウガ属の植物は、観賞用、薬用、食品としての利用など、多様な用途があります。

観賞用:
レッド・ジンジャーは、鮮やかな赤い花と苞葉が美しく、観賞用として栽培されています。また、ハワイでは切り花としても利用されています。フイリゲットウなどは、花と葉の両方が観賞の対象となります。

薬用:
多くの種が古くから薬用として利用されています。例えば、ナンキョウは健胃や胃痛に効果があるとされ、熱帯地域では広く栽培されています。クマタケランやハナミョウガも漢方薬として知られています。

食品への利用:
東南アジアでは、果実を食用とする例がありますが、これは地域的なものです。A. conchigeraの根茎は、調味料や酒の香味付けに用いられます。

その他:
東南アジアでは、偽茎を裂いてマットや編み物の材料にしたり、葉を屋根を葺くのに利用したりすることがあります。

出典

初島住彦 『琉球植物誌』追加・訂正版、(1975)、 沖縄生物教育研究
『園芸植物大事典 1』、(1994)、小学館
佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物 草本I 単子葉植物』,(1982),平凡社
堀田満、「ハナミョウガ」：『朝日百科 植物の世界 10』、(1997)、朝日新聞社：p.180-183.
堀田満、「ショウガ科」：『朝日百科 植物の世界 10』、(1997b)、朝日新聞社：p.172-173
坂梨一郎他、「ハナミョウガ属」：『世界有用植物事典』、(1989)、平凡社：p.72.

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