ショウガ科

ショウガ科（Zingiberaceae）について

ショウガ科は、熱帯を中心に広く分布する、約50属1600種からなる被子植物の科です。これらの植物は、芳香を持つ多年生の草本であり、地下には肥大した根茎を持つことが特徴です。花の形はラン科植物に似ていますが、構造的には全く異なります。多くの種が香辛料、薬用、観賞用として利用されています。

特徴

ショウガ科の植物は、地下茎がよく発達しており、独特な形状の花を咲かせる単子葉植物です。日本には自生種が少ないですが、熱帯地域には多様な種が存在します。

植物体は、ショウガやミョウガのように、地下茎から茎（実際には葉鞘が重なり合った偽茎）が伸び、左右2列に多数の葉をつけます。花は通常、穂状に咲き、花序は偽茎の先端から出るもの（ゲットウなど）と、地下茎から別の茎を伸ばしてつけるもの（ミョウガなど）があります。果実は液果または蒴果です。

花の構造

ショウガ科の花は、独特な構造を持っています。雄しべと雌しべが融合しており、唇状の花弁を持つことが特徴です。これはラン科の花に似ていますが、構造は全く異なります。

花は6枚の花被（外花被3枚、内花被3枚）を持ちます。外花被は癒合して筒状になり、内花被は基部が癒合して先端が3つに分かれます。唇状の花弁に見えるものは、実際には雄しべが変化したものです。雄しべは通常6つありますが、そのうちのいくつかが退化し、最終的に機能する雄しべは1つだけです。この雄しべは雌しべと融合し、花柱の先端に柱頭、基部に葯がつきます。花粉はラン科のように花粉塊にはなりません。

利用

ショウガ科の植物は、香辛料としての利用が一般的です。ショウガやミョウガの地下茎は薬味として、ゲットウの葉は沖縄で餅を包むのに用いられます。また、カルダモンはこの科に属し、種子が香辛料として利用されます。

近年では、クロウコン（ブラックジンジャー）のように精力剤として注目されるものもあります。一方で、ゲットウやハナシュクシャは観賞用として栽培され、ガジュツやウコンの地下茎は漢方薬や染料として利用されます。

分類

日本本土では、ハナミョウガが関東以西に分布する程度で、多くはそれより南に分布します。世界的には、熱帯を中心に約49属1500種が存在します。熱帯多雨林では、巨大な下草として繁茂していることもあります。

下位分類

ショウガ科は、以下の亜科、連、属に分類されます。

亜科 Siphonochiloideae
連 Siphonochileae
シフォノキルス属 Siphonochilus
亜科 Tamijioideae
連 Tamijieae
タミユィア属 Tamijia
亜科 Alpinioideae
シリクアモムム属 Siliquamomum (incertae sedis)
連 Alpinieae
アフラモムム属 Aframomum - ギニアショウガ
ハナミョウガ属 Alpinia - ゲットウ、ガランガル
アモムム属 Amomum
アウロタンドラ属 Aulotandra
キフォスティグマ属 Cyphostigma
ショウズク属 Elettaria - カルダモン
エレッタリオプシス属 Elettariopsis
エトリンゲラ属 Etlingera
ゲオカリス属 Geocharis
ゲオキタシス属 Geostachys
ホルンステドゥティア属 Hornstedtia
レプトソレナ属 Leptosolena
プラギオスタキス属 Plagiostachys
レネアルミア属 Renealmia
ヴァノヴェルベルギア属 Vanoverberghia
×Alpingera F. Luc-Cayol (Alpinia × Etlingera) - 属間雑種
連 Riedelieae
ブルビドゲア属 Burbidgea
プレウラントディウム属 Pleuranthodium
リエデリア属 Riedelia
シアマントゥス属 Siamanthus
亜科 Zingiberoideae
カウロカエムプフェリア属 Caulokaempferia (incertae sedis)
syn. ピルゴフィルム属 Pyrgophyllum
連 Zingibereae
ボエセンベルギア属 Boesenbergia
syn. クルクモルファ属 Curcumorpha
カムプタンドラ属 Camptandra
カウトレイア属 Cautleya
コルヌカエムプフェリア属 Cornukaempferia
ウコン属 Curcuma - ウコン（秋ウコン）、ハルウコン（キョウオウ）、ムラサキウコン（ガジュツ）、クルクマ（園芸分野で用いられるウコン属各種）
syn. パラカウトレイア属 Paracautleya
ディスティコクラミス属 Distichochlamys
ハニッフィア属 Haniffia
ハプロコレマ属 Haplochorema
シュクシャ属 Hedychium
ヒトケニア属 Hitchenia
バンウコン属 Kaempferia - クラチャイダム、バンウコン
ケダリア属 Kedhalia
ラオサントゥス属 Laosanthus
ミュクソクラミュス属 Myxochlamys
ナノキルス属 Nanochilus
ネウマニア属 Newmania
パラカエムプフェリア属 Parakaempferia
ポムメレスケア Pommereschea
リンカンツス属 Rhynchanthus
ロスコエア属 Roscoea
スカフォクラミス属 Scaphochlamys
スミタトゥリス Smithatris
スタディオキルス属 Stadiochilus
スタフリアンツス属 Stahlianthus
ショウガ属 Zingiber - ショウガ
連 Globbeae
ガグネパイニア属 Gagnepainia
グロッバ属 Globba
ヘミオルキス属 Hemiorchis

代表的な種

日本に分布する代表的な種は以下の通りです。

ショウガ属 Zingiber
ミョウガ Z. mioga
ハナミョウガ属 Alpinia
ハナミョウガ A. japonica
アオノクマタケラン A. intermedia
イリオモテクマタケラン A. flabellata
クマタケラン A. formosana
ゲットウ A. zerumbet
シマクマタケラン A. boninensis
チクリンカ A. bilamellata
イオウクマタケラン A. nakaiana

その他、栽培されている有名な種としては、以下のものがあります。

ショウガ Zingiber officinale
ムラサキガジュツ Curcuma aeruginosa
クルクマ・アリスマティフォリア C. alismatifolia
キョウオウ C. aromatica
ウコン C. domestica
ガジュツ C. zedonaria
ショウズク（カルダモン） Elettaria cardamomum
ハナシュクシャ Hedychium coronarium
ヤクチ Alpinia oxyphylla
レッドジンジャー Alpinia purpurata
* クラチャイダム Kaempferia parviflora

ショウガ科は、その多様な形態と利用方法から、私たちの生活に深く関わっている植物群です。

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