ハノーバー・ストリート哀愁の街かど

概要

1979年にアメリカで製作、公開された映画『ハノーバー・ストリート哀愁の街かど』（原題：Hanover Street）は、激動の時代を背景にした恋愛ドラマである。第二次世界大戦中のロンドンを舞台に、過酷な状況下で出会った男女の運命的な恋が描かれる。監督はサスペンスやアクション作品で知られるピーター・ハイアムズが務め、主演には当時スターダムを駆け上がりつつあったハリソン・フォードを迎えたほか、レスリー＝アン・ダウン、クリストファー・プラマーといった実力派俳優が名を連ねている。戦争の緊迫感と人間関係の機微を織り交ぜながら、愛の尊さと儚さを問いかける一作として知られる。

物語

物語の幕開けは、第二次世界大戦下のロンドン。ナチス・ドイツによる激しい空襲、「ザ・ブレッツ」として知られるV1飛行爆弾やV2ロケットによる攻撃が続き、街は常に危険に晒されていた。人々は不安と隣り合わせの日々を送る中、アメリカ陸軍航空隊のB-25爆撃機パイロットであるデイヴィッド・ハロラン中尉は、任務の合間に滞在していたロンドンで、ある女性と出会う。彼女はマーガレット・セリンジャーという名の献身的な英国人看護師だった。

二人の出会いは、まさに戦火の真っただ中、ロンドン大空襲がピークを迎える夜だった。砲火が飛び交い、轟音が響き渡る緊迫した状況下で、偶然にもハノーバー・ストリートという通りで彼らは巡り合う。非日常的な極限状態での劇的な遭遇は、二人の間に特別な感情を芽生えさせるきっかけとなる。

デイヴィッドとマーガレットは、危険な時代にあって急速に心惹かれあっていく。しかし、戦時下という特殊な環境は、彼らの関係に様々な困難をもたらす。軍務に就くデイヴィッドはいつ危険な任務に就くか分からず、またマーガレットも自身の立場や状況に制約を抱えている。クリストファー・プラマーが演じる登場人物もまた、二人の関係や物語の展開に深く関わってくることになる。

愛を育むにつれて、二人は様々な試練に直面する。それは、戦争が引き裂こうとする人々の絆、そして個人の感情と時代の要請との間で揺れ動く葛藤である。物語は、過酷な運命に翻弄されながらも、真実の愛を求めようとする男女の姿を情感豊かに描き出す。果たして、戦火の中で芽生えた儚い愛は、いかにしてその結末を迎えるのだろうか。

製作とキャスト

監督のピーター・ハイアムズは、『カプリコン・1』や『アウトランド』といったスリラーやSF作品で評価を得ていた時期であり、本作ではそれまでの作風とは異なるロマンティックなドラマに挑んだ。主演のハリソン・フォードは、『スター・ウォーズ』シリーズや『インディ・ジョーンズ』シリーズで世界的な人気を獲得する直前あるいは最中にあり、本作ではタフなパイロットの内面に秘めた優しさや情熱を演じている。相手役のレスリー＝アン・ダウンは、英国女優らしい気品と看護師としての芯の強さを併せ持つマーガレットを演じ、ハリソン・フォードとのケミストリーを見せた。また、クリストファー・プラマーが物語に深みを与える存在として登場する。

第二次世界大戦下のロンドンの雰囲気は、美術や衣装、特撮によって丹念に再現されており、物語に説得力を与えている。映画は、単なる恋愛物語としてだけでなく、戦争という非人間的な状況下でも確かに存在する人間の感情や絆を描き出すことを試みている。

日本公開時の字幕は、野中重雄が担当した。

ハノーバー・ストリート 哀愁の街かど