ハバル・ユニス・スルタン国

ハバル・ユニス・スルタン国は、18世紀にアフリカの角の一部を支配したソマリ人の君主国です。現在のソマリランドとエチオピアにまたがる広大な地域を領土とし、イサック氏族のハバル・ユニス支族によって統治されていました。

歴史

建国

スルタン国の起源は17世紀、イサック氏族がアブサメ支族を討伐した後に、エイダガレのレル・グルド分家が建国したイサック・スルタン国に遡ります。ハバル・ユニス支族はイサック・スルタン国から離脱し、アイナンシェ・ヘルシの息子スグレが独自の王国を築きました。スルタンとなったデリア・スグレは、ワダンを首都として建設し、そこから税と行政を管理しました。ベルベラに向かう隊商が領土を通過することで、大きな収入源となりました。

拡大とライーアド戦争

デリアの死後、1850年に孫のヘルシ・アマンがスルタンを継承し、征服の時代を迎えました。1870年、ヘルシ・アマンはダロッド氏族とハウドに対してライーアド戦争を起こし、その戦いを描いたグバ連歌はソマリアの歴史に名を残しています。スイスの探検家ハゲンマッヘルは、1873年にヘルシ・アマンに謁見し、ハウドの戦いにおけるハバル・ユニスの勝利について記録しています。

ハロ・ディーグの戦いでは、ハバル・ユニスが勝利しレル・ハロウン・オガデンのスルタンを捕縛しました。捕縛されたスルタンは助けを求めましたが、ヘルシは「心優しき者は滅びるであろう」と拒否し、処刑しました。

第一次内戦

ヘルシ・アマンの権力が増大するにつれて、レル・スグレの他の支族は彼の主導力を恐れ、対立するようになりました。レル・スグレの有力者であるグレド・ハッジは、ヘルシと対立し、グレドの息子がヘルシの息子に殺害される事件が発生しました。ヘルシはグレドへの賠償金の支払いを拒否し、レル・スグレの支族間で全面的な対立が起こりました。

スルタンのヘルシは戦死し、彼の指揮官ワルサメも倒れました。ワルサメの妹は、息子のアリー、ヘルシ、夫のゲイドらを失った嘆きを詩に詠み、記録されています。

ヘルシの死後、レル・スグレは賠償問題について話し合いましたが、何も支払わずに紛争を終結させることを決定しました。

二人のスルタン時代

ヘルシ・アマンの死後、バハ・デリア分家とバハ・マカヒル分家がスルタン位を争い、ハバル・ユニス支族は二分されました。バハ・デリアはアワド・デリアを、バハ・マカヒルはヌール・アフメド・アマンをスルタンとして擁立しました。英領ソマリランド保護領は、この対立に影響を与えることはありませんでした。アワドはブラオから、ヌールはトゥーヨ平原とオードウェイネからスルタン国を支配し、紛争が絶えませんでした。

1884年にブラオを訪れたフランク・リンスリー・ジェームスは、二人のスルタンが対立する状況を目撃しています。アワドはオガデンで殺害され、ヌールがブラオを支配し、ハバル・ユニス全体を支配することが可能となりました。しかし、バハ・デリアはアワドの甥、マダル・ヘルシを後継者として選びました。ヌールはハバル・ユニスの「ヘール」を招集し、くじ引きでスルタンを決めることにしました。ヌールがくじに勝ち、マダル・ヘルシに補償を与え、スルタンとなりました。

ダラーウィーシュ時代初期

ヌールはベルベラでの騒乱の立役者であり、ダラーウィーシュ運動への参加を呼びかけました。マダルはイギリス当局から合法なスルタンであると承認され、ダラーウィーシュ戦争の間、ハバル・ユニス支族の西部を管理しました。

英領ソマリランドへの編入

ヌールはダラーウィーシュ運動に深く関わり、1905年のイリグ条約の調印者の一人となりました。ヌールの死後、息子のドラル・ヌールがスルタンとなりましたが早世し、マダル・ヘルシがスルタンとなりました。イギリスの介入が広まり、ハバル・ユニス・スルタン国は終焉を迎えました。

経済

スルタン国は強力な経済力を持ち、ベルベラへの隊商路を支配していました。ブラオの貿易は重要であり、ハバル・ユニス東部は海岸への道と独自の港を持っていました。乳香を生産し、アラブ人やバニャンの商人がメイドを訪れました。ハバル・ユニスはイエメンと重要な貿易関係を持っていました。

行政

スルタンは同盟関係にあるアキルや支族の指導者を通じて権力を行使しました。隊商路に沿ったワダンやブラオを選び、商人から税金を徴収しました。首都は商人や遊牧民にとって重要な水場でした。スルタンの長男が後継者ですが、要件を満たさない場合は別の息子が選出されることがありました。

支配者

ハバル・ユニス・スルタン国には歴代8人のスルタンがおり、スルタン制は現在も継続しています。

現在

ハバル・ユニスでは、伝統的な氏族制度と統率が存続しています。レル・アイナシェのスルタンは、ハバル・ユニスの指導者として認められています。現在のスルタンはオスマン・アリー・マダルであり、ソマリランドの社会問題に積極的に取り組んでいます。

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