ハプログループE (mtDNA)

ハプログループE（mtDNA）は、分子人類学においてミトコンドリアDNAハプログループ（母系集団）を分類する際に用いられる名称です。このハプログループは、祖先となる「M9」から派生し、特定の塩基配列の変異によって定義されます。具体的には、3027, 3705, 7598, 13626, 16390番目の塩基に特有の変異が見られます。

分布

ハプログループEは、海域東南アジアに広範囲に分布しているのが特徴です。姉妹群であるM9aが東アジア大陸部にも見られるのに対し、ハプログループEは大陸部にはほとんど分布していません。特に、オーストロネシア語族を話す人々に高頻度で見られ、他の語族を話す人々には稀です。具体的には、台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシア、パプアニューギニア沿岸部、そして太平洋諸島、特にチャモロ人によく見られます。

ハプログループEの下位系統としては、E1a、E1b、E2a、E2bなどが知られています。このうち、E1bとE2aは海域東南アジアで広く見られ、E1aとE2bは台湾で多く見られます。これらの下位系統の分布は、ハプログループEの拡散の歴史を理解する上で重要な手がかりとなります。

起源

ハプログループEの起源については、かつてはスンダランド起源説も提唱されていましたが、近年、新たな発見がありました。2014年に中国南東部の亮島で発見された約8000年前の人骨がハプログループEに属していたことが判明し、これにより従来の説が見直されることになりました。

この発見に基づき、現在ではハプログループEは11,000〜8,000年前に福建省沿岸部で誕生したと考えられています。その後、新石器時代の約6,000年前には台湾に到達し、オーストロネシア語族の拡散とともに、台湾から東南アジアの島々へと広がっていったと推定されています。この拡散の過程は、ハプログループEの分布とオーストロネシア語族の分布が密接に結びついていることからも支持されています。

ハプログループEの研究は、人類の移動と文化の広がりを理解する上で重要な手がかりを提供しています。特に、東南アジアにおける人々の移動経路や、オーストロネシア語族の拡散の謎を解明する上で、さらなる研究が期待されています。

まとめ

ハプログループEは、ミトコンドリアDNAハプログループの一つで、東南アジアの海域に広く分布しています。その起源は中国福建省沿岸部にあり、オーストロネシア語族の拡散とともに東南アジアの島々へ広がったと考えられています。このハプログループの研究は、人類の移動と文化の広がりを理解する上で重要な手がかりとなります。

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