ハプログループL3 (mtDNA)

ハプログループL3 (mtDNA) について

ハプログループL3 (mtDNA)は、分子人類学において、ミトコンドリアDNAハプログループの一つとして分類されます。このグループは、ハプログループL1からL6の子系統であり、特定の変異によって定義されます。具体的には、769、1018、および16311番目の塩基における変異によって区別されます。

起源

ハプログループL3は、8万年から10万4千年前、または6万年から7万年前の間に東アフリカで誕生したと考えられています。このグループは、アフリカから世界に広がったハプログループNとハプログループMの祖先にあたります。

この説の根拠として、ハプログループL3がアフリカ大陸北東部に多く分布し、その多様性が大きいことが挙げられます。また、ハプログループL3から派生したハプログループMとNがアフリカ大陸外に分布していることも、L3が東アフリカで発生し、そこから拡散した集団が出アフリカを果たしたという考えを支持します。系統的にL3に近いL6とL4も東アフリカに多く分布し、多様性が大きいことも傍証となります。

アフリカ起源説

ハプログループL3は、およそ7万年前の出アフリカの頃に発生し、東アフリカから西アジア、そして数千年かけて南アジアと東南アジアへと拡大したと考えられています。いくつかの研究では、この移動にL3が関与していたことが示唆されています。

年代推定: ハプログループL3の起源年代については、10万4千年から8万4千年前とする推定もあれば、より新しい7万年から6万年前とする説もあります。
拡散の時期: 6万5千年から5万5千年前には東アフリカからユーラシアへ、6万年から3万5千年前には東アフリカから中央アフリカへと拡大した可能性が高いとされています。

初期新石器時代の北アフリカの遺跡で発見された古代のmtDNAの系統解析からも、ハプログループL3は7万年から6万年前に東アフリカで発生し、アフリカ内部に広がった後、アフリカを離れたと結論づけられています。また、出アフリカに伴い、mtDNAハプログループNはアラビアまたは北アフリカで分岐し、mtDNAハプログループMはハプログループNとほぼ同時期に中東で発生したと考えられています。

約8万年から6万年前には、西アフリカ人、東アフリカ人、非アフリカ人の祖先を含むグループが東アフリカを起源とする共通集団に由来するとされており、ハプログループL3の起源地もそこであるとされています。

アジア起源説

一方、ハプログループL3はアジアに起源を持つという異説も存在します。この説の根拠は、L3から派生したハプログループMとNの最も古い系統が東南アジアからオセアニアに存在し、それらのグループの合着年代が東から西に向かって新しくなっていることです。これは、L3が東アフリカ起源であるという従来の説とは矛盾します。

また、L3、M、Nの分岐年代が約7万年前頃であることから、これらの集団が東南アジアで相次いで分岐した可能性も指摘されています。さらに、Y染色体ハプログループDEの分岐年代も約7万年前であり、mtDNAハプログループL3とY染色体ハプログループEの分布に強い相関が見られることから、L3系統は中央アジアに起源を持ち、7万年前頃にアフリカ大陸へ戻ったという仮説も提唱されています。

分布

ハプログループL3は、東アフリカで最もよく見られるタイプであり、エチオピア、アフリカの角、ソマリアなどの地域だけでなく、エジプト、チャド、ベルベル人などにも分布しています。この分布は、アフロ・アジア語族の拡散と関連があると考えられています。

まとめ

ハプログループL3は、人類の起源と拡散の歴史を解明する上で重要な役割を果たします。アフリカ東部で誕生し、そこから世界各地へと広がったという説が有力ですが、アジア起源説も存在し、今後の研究によって、このグループの起源と拡散の謎がさらに解き明かされることが期待されます。

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