ハプログループO1 (Y染色体)

ハプログループO1 (Y染色体)

概要

ハプログループO1 (Y染色体)は、ヒトのY染色体ハプログループの系統分類において、ハプログループOの下位に位置づけられる主要な系統の一つです。この系統は、遺伝子上の特定の変異であるF265/M1354, CTS2866, F75/M1297, F429/M1415, F465/M1422などによって定義されます。Y染色体は男性によって父から息子へとほぼそのまま受け継がれるため、Y染色体ハプログループの研究は、父系をたどった人類の集団の歴史や移動経路の解明に重要な手がかりを与えます。

系統樹上の位置と名称の変遷

ハプログループO1は、比較的新しく設定された系統名です。これは、2015年11月に行われたISOGG（International Society of Genetic Genealogy）のY染色体系統樹の大規模な改訂によって設けられました。この改訂以前は、現在ハプログループO1aと呼ばれている系統が「O1」と称され、現在ハプログループO1bと呼ばれている系統が「O2」と称されていました。改訂により、旧O1（現O1a）と旧O2（現O1b）が遺伝的に姉妹群であることがより明確になり、両者をまとめて包括する上位の系統として、新たにハプログループO1が定義されたのです。

系統樹において、ハプログループO1はハプログループO（定義変異：M175）から分岐し、さらにその下でハプログループO1a（定義変異：M119, CTS31, F589/Page20など）とハプログループO1b（定義変異：M268, F138, F167/L690, F256/M1341, F292/M1363, F330/L463, F435/M1417, F516, P31など）に分岐します。ハプログループO1bはさらに下位系統としてO1b1（定義変異：F2320など）やO1b2（定義変異：P49, M176など）を持ちます。ハプログループOの主要な系統としては、O1の他にハプログループO2（定義変異：M122, CTS10736, CTS10753, F36, F400, F433, F471, F633, P198など）が存在し、O1とO2は互いに比較的近縁な系統とされています。

分岐年代

ハプログループO1が、その姉妹群とされるハプログループO2（定義変異：M122）から分岐した後、比較的短い期間で下位系統であるO1a-M119とO1b-M268に分かれたことが推定されています。この分岐にかかった時間は千年程度とされており、複数の研究で様々な推定値が報告されています。
YFull YTree v5.06による推定では約1,400年、Karmin et al. (2015)の研究によれば約939年、Poznik et al. (2016)の研究では約900年あるいは800年と算出されており、研究手法や用いるデータセットによって多少のばらつきはありますが、いずれも千年強から千年弱という短い期間であったことを示唆しています。

まとめ

ハプログループO1は、Y染色体系統樹の重要な節目を示す系統であり、その定義、系統樹上の位置、そして下位系統への分岐年代に関する研究は、東アジアや東南アジアなどにおける人類集団の形成史や拡散パターンの理解に貢献しています。2015年の系統樹改訂によって、より明確な分類体系の中に位置づけられることとなりました。その姿は、この分野の研究の進展を示すものです。

（この記述は、2015年時点のISOGG系統樹改訂情報および関連する研究報告に基づいています。）

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