ハマトラ (ファッション)

ハマトラ

ハマトラとは、「横浜トラディショナル」を略した名称で、主に1970年代後半から1980年代前半にかけて、神奈川県横浜市の元町界隈で人気を博した女性向けのファッションスタイルを指します。このスタイルは、特に横浜元町周辺に集まる女子大生たちの間で支持され、独自のコーディネートとして認識されていました。その根底には、英国のトラディショナルなファッションに由来する要素があり、今日のコンサバティブ・ファッションの系譜に位置づけられます。

ハマトラの名付け親は、横浜市伊勢佐木町の出身で、後に女性ファッション誌『an・an』の編集長やマガジンハウスの副社長を務めた甘糟章氏であるとされています。

このスタイルが全国的なブームとなった背景には、女性ファッション雑誌の力が大きく影響しています。『an・an』やそのライバル誌であった『non-no』、さらには光文社の『JJ』といった主要なファッション誌が積極的に「ハマトラ」を特集したことで、大きな注目を集めました。これを機に、横浜元町に本店を構える多くのファッションブランドが全国的に有名になりました。

同じ頃、関西地方では1970年代中頃から神戸発祥のコンサバティブファッションである「ニュートラ」が流行していましたが、関東地方では横浜発の「ハマトラ」が脚光を浴びていました。ファッション誌は、おしゃれな港町・横浜にあるお嬢様学校として知られるフェリス女学院大学に通う女子大生のイメージを取り上げ、その最寄り駅周辺に位置する横浜元町商店街の店舗で扱われるブランド品を選んで紹介することで、ハマトラの世界観を作り上げました。

ハマトラファッションの象徴ともいえる定番ブランドとしては、元町商店街に本店を置く店が多く挙げられます。中でも、フクゾーの洋服、ミハマの靴、そしてキタムラのハンドバッグは、「三種の神器」と称され、ハマトラを代表する必須アイテムでした。これらの元町ブランドの他にも、クレージュの弁当箱型ショルダーバッグなどが定番アイテムとして親しまれました。ブームの末期には、SHIPSやボートハウスといった東京のブランド（SHIPSは銀座、ボートハウスは青山が発祥）による、胸元にロゴが入ったレタードトレーナーなども流行アイテムとして目立つようになりました。

ハマトラの基本的なコーディネートは、「清潔感のあるお嬢様スタイル」を基調としていました。ポロシャツにベストやカーディガンを重ね着し、膝丈のタータンチェックの巻きスカートを合わせるスタイルが典型的です。足元はハイソックスにローヒールパンプスを合わせるのが定番でした。ハマトラは元々女子大生のキャンパスファッションとして始まり、その多くがカジュアルな要素を持っていたため、その着こなしやアイテムは、本来のターゲット層である20歳前後の女性だけでなく、それ以下の年齢層である女子中高生にも大きな影響を与えました。

一方、関西で流行したニュートラは、海外の高級ブランドアイテムなども巧みに取り入れ、キャンパスファッションに留まらず、OLをはじめとする社会人のファッションやよりフォーマルな場面にも対応できる幅広い範囲をカバーしていました。この点において、ニュートラはハマトラよりもやや年齢層の高い女性たちに支持されていたと言えます。

ハマトラの定番とされた元町ブランドの多くは、地元横浜の元町でなければ手に入りにくいという希少性がありました。これが「ハマっ子」にとっては一種のステータスシンボルともなっていましたが、同時に横浜という一地域のローカルなファッションブームに留まる要因ともなりました。しかし、その人気は単に横浜に限定されず、東京を含む首都圏の若い女性たち、特に女子学生（中高生を含む）にも大きな影響を与えました。東京都内のミッションスクールなど、私立女子中高生の私服にハマトラのスタイルが取り入れられたのはもちろんのこと、膝丈スカートにハイソックスという組み合わせは、当時の学生たちの制服の着こなしにも影響を及ぼすほどでした。

Hamatra left a notable mark on Japanese fashion history, embodying the distinctive style of Yokohama's youth culture in the late 20th century.

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