ハミルカル・バルカ

ハミルカル・バルカ：ハンニバルの父、カルタゴの英雄

ハミルカル・バルカ（紀元前275年頃 - 紀元前228年）は、古代カルタゴの将軍であり、歴史に名を残す名将ハンニバル・バルカの父として知られています。彼の名はフェニキア語に由来し、「メルカルト神の僕」という意味を持ちます。バルカという家族名は「電光」を意味し、その武勇を象徴するかのようです。

第一次ポエニ戦争での活躍

ハミルカルは、第一次ポエニ戦争（紀元前264年 - 紀元前241年）において、カルタゴ軍の指揮官としてローマ軍と激戦を繰り広げました。特にシチリア島での戦いでは、陸と海からローマ軍を挟撃し、ローマを大いに苦しめました。しかし、本国カルタゴの敗北により、ローマとの講和を余儀なくされます。

シチリアでの戦いにおいて、ハミルカルは北西海岸への強襲上陸を敢行し、少数精鋭の傭兵を率いてパレルモ近郊のエロテ山を占拠しました。彼は防御を固めるだけでなく、イタリア半島南部への攻撃も仕掛け、ローマを揺さぶりました。紀元前244年には、エリュクス山（現在のエーリチェ）に移動し、包囲された友軍を援護しました。ローマ軍の度重なる攻撃を全て撃退し、彼の軍は無敗を誇りました。しかし、本国海軍の敗北により、紀元前241年に和議が成立。ハミルカルは降伏することなくカルタゴへ帰還しました。

傭兵反乱の鎮圧

第一次ポエニ戦争後、カルタゴは深刻な財政難に陥り、傭兵への報酬支払いが滞りました。これに対し、傭兵たちは反乱を起こし、カルタゴは内憂外患に苦しむことになります。この危機に対し、カルタゴ政府はハミルカルに鎮圧を要請します。紀元前237年、ハミルカルは見事に傭兵の反乱を鎮圧し、その軍事的才能とリーダーシップを改めて示しました。この鎮圧戦を通じて、ハミルカルはアフリカにおいて絶大な名声と影響力を確立しました。

ヒスパニア遠征と新カルタゴ建設

反乱鎮圧後、ハミルカルの影響力は増大し、政敵たちは彼に対抗することができませんでした。彼は自らの軍隊を組織し、ヌミディアなど各地から傭兵を集めて訓練を施しました。そして、カルタゴ政府からの干渉を受けない独自の王国を築くため、ヒスパニアへの遠征を決意します。シチリアを失ったカルタゴを、新たな領土の開拓によって支援しようと考えたのです。この遠征には、幼い息子のハンニバルも同行しました。ハンニバルを神殿に連れて行き、ローマへの復讐を誓わせたという逸話は、あまりにも有名です。

8年に及ぶ遠征の末、ハミルカルはヒスパニアにおける支配を確立しつつありました。彼は新たな拠点としてカルタゴ・ノウァ（現在のカルタヘナ）の建設に着手しましたが、その完成を見ることなく戦死しました。彼の遺志は、娘婿であるハシュドゥルバルによって引き継がれ、ハンニバルによるローマへの復讐へと繋がっていくのです。

ハミルカル・バルカは、カルタゴの危機を救い、ハンニバルという稀代の英雄を育て上げた、傑出した軍事指導者でした。彼の戦略的思考、不屈の精神、そして息子への熱い思いは、歴史に深く刻まれています。

関連項目

第一次ポエニ戦争
バルカ家
ハンニバル
大ハンノ
カルタゴ
サランボー - ギュスターヴ・フローベールの歴史小説

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