ハヤセガメ

ハヤセガメ (Rheodytes leukops)

ハヤセガメは、爬虫類のカメ目に属する特異な種で、主にオーストラリアのフィツロイ川水系に分布しています。これはハヤセガメ科に唯一分類されるカメであり、その特異な生態と外観が特徴です。

形態的特徴

最大で甲長は26.2センチメートルに達し、背甲は楕円形を呈します。第1椎甲板は第2椎甲板と同じ幅か、それよりも広めである場合が多くなっています。背甲の色は褐色から暗褐色で、不鮮明な黄褐色の斑点が見られます。一方、腹甲は一般的に細長く、小型です。喉甲板の間に位置する間喉甲板は小さく、左右の肩甲板が接触しています。腹甲の色は黄褐色であり、視覚的に特徴的です。

頭部は比較的大きく、瞬膜が存在しません。頭部と頸部では、背面がオリーブ色や褐色で、腹面は黄色やオレンジ色となります。老齢の個体では、腹面の明色部分が拡大しより鮮やかな色合いを呈します。後肢には爪がある5本の趾があり、呼吸補助器官となっている袋状の器官（粘膜嚢、副膀胱）を持ち、水中から酸素を取り入れて呼吸します。この器官の発達はカメ目中でも特に顕著で、曲頸亜目や潜頸亜目の一部でも見られます。また、尾は短く、断面は円形をしています。

幼体では、背甲が円形になり、椎甲板に沿って筋状の盛り上がりが見られることが特徴です。縁甲板の後端は鋸状に尖っています。

生態と生活様式

ハヤセガメは砂や岩で構成された流れの速い河川の急流、特に早瀬に生息しています。属名のRheodytesは「渓流に潜るもの」という意味を持ち、完全水棲の生態を示しています。このカメは主に産卵の際にのみ上陸するため、その生態や行動に関する観察例は少なく、謎に包まれています。また、空気を吸うために水面に上がることも稀です。

食性については動物食であり、主に水生昆虫を摂取します。それに加えて、淡水棲の海綿動物なども食べることがあります。

人間との関係

ハヤセガメは日光浴や呼吸のために水面に現れることが少ないため、観察される機会は非常に限られています。このため、生態についての研究はまだ多くの未解明の部分があります。もともと生息数が少なく、分布が限定されているため、保護や保存活動が求められています。

出典

• - 海老沼剛『爬虫・両生類ビジュアルガイド 水棲ガメ2 ユーラシア・オセアニア・アフリカのミズガメ』、誠文堂新光社、2005年、100頁。
• - 安川雄一郎「水棲ガメの世界」『ハ・ペト・ロジー』Vol.3、誠文堂新光社、2005年、41-42頁。

外部リンクにてさらなる情報が得られます：ウィキメディア・コモンズやウィキスピーシーズにカテゴリや情報が存在します。

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