ハラ (映画)

異なる文化の間で揺れる17歳―映画『ハラ』レビュー

2019年にApple TV+で配信されたアメリカ映画『ハラ』(原題:Hala)は、17歳の少女ハラ・マスードの葛藤と成長を描いた青春ドラマです。監督はミナル・ベイグ、主演はジェラルディン・ヴィスワナサンが務め、そのパワフルな演技は高い評価を得ています。本作は、製作スタッフの65%を女性が占めるという点でも注目に値します。

舞台はイリノイ州シカゴ。パキスタン移民の家庭に育ったハラは、敬虔なイスラム教徒としての生活を強いられます。しかし、高校生活を通してアメリカ文化に触れるにつれ、ハラは伝統と自由、信仰と個のアイデンティティの間で揺れ動き始めます。クラスメートのジェシーとの交流を通して、彼女は新たな感情や価値観に直面し、自身の信仰心と折り合いをつけることに苦悩します。

ハラは、一見平和に見える家庭に隠された衝撃的な秘密を知ることになります。その秘密は、ハラの両親、特に母親であるエラムとの関係に大きな亀裂を生みます。彼女は、これまでの自分の価値観や周囲からの期待と現実との間に生まれたギャップに戸惑い、葛藤します。

ジェラルディン・ヴィスワナサンは、そんなハラの複雑な感情を繊細かつ力強く表現しています。彼女の演技は、ハラの内面にある葛藤や心の揺れを зрительに鮮やかに伝えます。脇を固めるキャスト陣、ジャック・キルマー、プルビ・ジョシ、アザド・カーンらも、それぞれの役どころを丁寧に演じ、物語に深みを与えています。

『ハラ』は、単なる青春映画にとどまりません。移民の娘として、イスラム教徒として、そして一人の女性として、アイデンティティの模索に苦悩するハラの姿は、多くの視聴者に共感を呼びます。宗教、文化、家族、そして自己実現といった普遍的なテーマを、現代的な視点から丁寧に描き出している点が、本作の魅力です。

サンダンス映画祭でのプレミア上映、Apple TV+での配信、シカゴ映画祭、AFIフェストなどでの上映を経て、『ハラ』は高い評価を得ています。Rotten Tomatoesでは批評家支持率88%、Metacriticでも75/100という高評価を獲得し、批評家から絶賛されています。

『ハラ』は、宗教や文化、家族の複雑な関係性の中で、自分自身を見つける旅に出る一人の少女の物語です。その美しい映像、優れた演技、そして深いテーマは、観る者の心に長く残る感動を与えてくれるでしょう。ハラが最後に下す決断、そして彼女が掴む未来とは一体どのようなものだったのか。ぜひ、ご自身の目で確かめてみてください。

キャスト:

ジェラルディン・ヴィスワナサン (ハラ・マスード)
ジャック・キルマー (ジェシー)
プルビ・ジョシ (エラム・マスード)
アザド・カーン (ザヒード・マスード)
ガブリエル・ルナ (ミスター・ローレンス)
アンナ・クラムスキー (シャノン・テイラー)
テイラー・ブリム (メラニー)

公開情報:

サンダンス映画祭プレミア上映 (2019年1月26日)
Apple TV+配信開始 (2019年)
シカゴ映画祭上映 (2019年10月18日)
AFIフェスト上映 (2019年11月18日)
サウンドトラック発売 (2019年12月10日)

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