ハリテルセース

ギリシア神話に登場する人物、ハリテルセース（古希: Ἁλιθέρσης, Halithersēs）。長母音省略でハリテルセスとも。ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』に描かれる、イタケー島の賢者です。

ハリテルセースは老齢の賢者で、トロイア戦争に出征したオデュッセウスとその家族と親しい間柄でした。彼は鳥の飛翔や行動から吉凶を判断する鳥占いに優れており、この能力をもってイタケー島の運命に関わる重要な予言を行います。

オデュッセウスがトロイア戦争に参加するため故郷を出発する際、ハリテルセースは鳥占いの結果から、彼がイタケー島へ帰還するまでに20年もの時を要すると正確に予言しました。これは、その後のオデュッセウスの苦難に満ちた旅路を正確に示唆する最初の出来事です。

オデュッセウスの長期不在中、多数の貴族が宮殿に居座り、ペーネロペーへの求婚と財産浪費という横暴を極めていました。息子テーレマコスがこの苦境を打破すべく集会を招集した際、ハリテルセースは登場します。集会の場で二羽の鷲が見せた異常な振る舞いを神々からの前兆と解釈した彼は、集まった人々、特に求婚者たちに対し、オデュッセウスが間もなく帰還し、彼らを滅ぼすであろうと厳粛に予言しました。彼は求婚者たちに悔い改めを忠告しましたが、傲慢な彼らはこれを嘲笑し、無視しました。この出来事は、ハリテルセースの予言の確かさと、求婚者たちの頑なさを対比させます。

父の消息を探すため、テーレマコスがイタケー島を離れて旅に出る決意をした際、ハリテルセースは彼を援助しました。彼はテーレマコスの船旅の準備を手伝い、若い王子が故郷から外の世界へ踏み出す重要な一歩を支えました。

オデュッセウスが帰還し求婚者たちを討伐した後も事態は収束しませんでした。殺害された求婚者たちの親族たちは、特にエウペイテースを中心として復讐を企てました。彼らが武装して立ち上がろうとした時、ハリテルセースは再び介入します。彼は集まった人々に対し、求婚者たちの運命は彼ら自身の傲慢さと神々の意志によるものだと説き、さらなる流血を避けるため復讐を思いとどまるよう強く説得しました。彼の賢明な説得は、アテーナーの仲介と相まって、最終的に島に平静を取り戻すことに貢献しました。

ハリテルセースは『オデュッセイア』において、正確な予言者として、また若いテーレマコスを助け、島の対立を和解させようとする賢明な助言者、調停者として重要な役割を担います。彼の存在は、運命や神々の意志の働きを示す要素であり、物語の節目節目で影響力のある行動をとる人物として描かれます。彼の言葉は時に無視されましたが、常に真実を含んでおり、最終的にはその予言通りの結末へと物語が進むことを示しています。彼はイタケー島における知恵と伝統を代表する人物と言えるでしょう。

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