ハリー・サルツマン

ハリー・サルツマンの生涯と功績

ハリー・サルツマン（Harry Saltzman）は、1915年にカナダ・ニューブランズウィック州で生まれた映画プロデューサーです。彼は007シリーズのプロデューサーとして特に知られており、映画界において重要な足跡を残しました。

幼少期と初期の経歴

サルツマンは15歳で家出し、その後は多くの職業を経験しました。第二次世界大戦中はパリで軍関連の仕事に従事し、戦後のパリでは映画関係者とつながりを持つようになります。これが彼の映画製作への道を開くことになりました。

007シリーズとの出会い

イアン・フレミングのスパイ小説007シリーズに目を付けたサルツマンは、1961年にこのシリーズの映画化権を獲得します。彼は資金を集めるために奔走しましたが、同じく映画化を目指していたアルバート・R・ブロッコリー（通称カビー）と出会い、権利を共同で持つことになります。この結果、イーオン・プロダクションズ（イオン・プロ）が設立され、1962年には親会社ダンジャックも設立されました。

007シリーズの始まり

アメリカのユナイテッド・アーティスツからの出資を得たサルツマンは、007シリーズ第1作『ドクター・ノオ』の映画化に成功します。この作品は大ヒットを記録し、映画版007シリーズはスパイ映画の金字塔となりました。サルツマンは、ブロッコリーやその他の制作者と共にその制作に携わり、007シリーズの初期の成功に大きく貢献しました。

名コンビとしての成功

007シリーズの第3作『ゴールドフィンガー』は興収が1億ドルを突破し、続く『サンダーボール作戦』ではさらに高い興行成績を上げました。この時期、サルツマンとブロッコリーは名コンビとして知られますが、両者の製作に対するアプローチには次第に違和感が生じていきました。サルツマンは原作に忠実な映画制作を目指していたのに対し、ブロッコリーはより娯楽性を重視していたのです。

異なるアプローチとその影響

この意見の相違から、サルツマンは1965年にレン・デイトンのスパイ小説『イプクレス・ファイル』の映画版製作を行うことに決めます。この作品は後に個性的なサスペンス映画として評価され、続編が製作されることになります。しかし、007シリーズ第6作『女王陛下の007』は興行的には失敗し、それ以降サルツマンとブロッコリーの間には微妙な溝が生まれました。

サルツマンの離脱

1975年、様々な個人的な事情からサルツマンは『007/黄金銃を持つ男』を最後にシリーズの制作から正式に身を引きます。この決断はファンに衝撃を与えました。サルツマンはその後不動産業など新たな事業に取り組むものの、うまくいかず経済的に苦境に立たされます。

その後の人生

007シリーズから離れた後もサルツマンは出演者たちとの関係を保っていましたが、晩年は多額の借金を抱え、妻を失ったことが心に重くのしかかります。1981年にブロッコリーとの再会があり、二人の関係は修復されますが、サルツマンは007シリーズに復帰することはありませんでした。

最後の活動と死

サルツマンは晩年、映画劇場運営や映画への出資に取り組み、その中で実績を残しました。1994年に78歳で心臓発作により他界しますが、その功績は映画界に多大な影響を与えました。興行成績や作品の質だけでなく、新たな映画の制作に対する彼の情熱は、今なお多くの人の記憶に残っています。

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