ハリー・ハルトゥーニアン

ハリー・D・ハルトゥーニアン（1929年 - ）は、アメリカを代表する日本研究者であり、その業績は近世から現代日本まで多岐にわたる。アルメニア系アメリカ人として生まれ、ウェイン州立大学卒業後、ミシガン大学で極東研究の修士号、歴史学の博士号を取得。

彼の研究人生は、シカゴ大学教授としての時代から始まる。同大学では近世日本の国学思想を専門的に研究し、日本ナショナリズム研究の基礎を築いた重要な役割を果たした。その後、ニューヨーク大学教授としてさらに研究活動を続け、両大学において名誉教授の称号を得ている。

ハルトゥーニアンの研究は、単著、共編著合わせて非常に多くの書籍に結実している。彼の単著は、日本の歴史と文化への深い洞察を示す重要な研究成果である。代表的な著書に『Toward Restoration: the Growth of Political Consciousness in Tokugawa Japan』（1970年）、『Things Seen and Unseen: Discourse and Ideology in Tokugawa Nativism』（1988年）、『History's Disquiet: Modernity, Cultural Practice, and the Question of Everyday Life』（2000年）、『Overcome by Modernity: History, Culture, and Community in Interwar Japan』（2000年）、『The Empire's New Clothes: Paradigm Lost, and Regained』（2004年）などがある。これらの著作は、日本語にも翻訳され、日本の研究者にも大きな影響を与えている。

彼の研究テーマは多様で、近世日本の政治意識の形成から、江戸時代の国学思想、戦間期の日本社会の変容、さらには現代日本のアイデンティティ問題までを網羅している。その研究方法も多角的で、歴史的事実の分析だけでなく、イデオロギーや文化的な文脈を深く掘り下げている点が特徴的である。単なる歴史記述にとどまらず、歴史と社会、文化を深く結びつけ、現代社会への示唆に富む分析を提供している点が彼の研究の大きな魅力となっている。

また、ハルトゥーニアンは数多くの共編著も手がけている。これは彼が、単独の研究者としてだけでなく、研究者コミュニティを形成し、共同で研究を進めてきたことを示している。『West and Non-West: New Perspectives』（1963年）、『Modern Japanese Leadership: Transition and Change』（1966年）、『Japan in Crisis: Essays on Taishō Democracy』（1974年）、『Postmodernism and Japan』（1989年）、『Japan in the World』（1993年）など、多くの共著を通して、日本の歴史と文化に関する多様な視点と解釈を提供してきた。

このように、ハリー・D・ハルトゥーニアンは、単に日本の歴史を研究するだけでなく、日本研究のあり方自体にも大きな影響を与えた重要な人物であると言える。彼の研究は、多角的な視点を持ち、歴史的、文化的な文脈を深く理解することで、日本の歴史と文化を深く理解しようとする姿勢を示している。その業績は、現代の日本研究にとっても、重要な指針となるだろう。彼の研究は、単に過去を解明するだけでなく、現代社会を理解するための重要な鍵を提供していると言えるだろう。

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