ナショナリズム

ナショナリズムとは

ナショナリズム（英: nationalism）とは、国家を一つの独立した共同体と捉え、その統一や独立を求める政治的思想や運動のことです。この概念は、自己の民族に基づいて形成されることが一般的であり、日本においては国家主義、国民主義、国粋主義、国益主義、民族主義など、さまざまな訳語が用いられています。また、ナショナリズムは時折、パトリオティズム（愛国心）と混同されることがありますが、両者は異なる概念です。

ナショナリズムの定義

ナショナリズムを定義することは困難ですが、哲学者アーネスト・ゲルナーは「政治的単位と文化的、または民族的単位を一致させようとする思想や運動」と述べています。他にも、スタンフォード哲学百科事典や丸山眞男など様々な学者が異なる観点からナショナリズムを定義しています。一般的には、民族の統一と独立、文化の共有を目指すものと理解されています。

文化的な側面

ナショナリズムは、文化が共有された範囲で政治的共同体を拡大しようとする作用や、共同体内での異なる文化を同化しようとする作用を持ちます。19世紀の国民運動の例が前者、近代国家における「公定ナショナリズム」が後者の一例として挙げられます。ナショナリズムはしばしば愛国心とも関わりますが、愛国心が必ずしもナショナリズムを表さない点に注意が必要です。

歴史的背景と発展

ナショナリズムの起源は18世紀後半のフランスにさかのぼります。特に1789年のフランス革命では、身分制社会の解体とともにナショナリズムが大きく進展しました。ナポレオン時代には、フランスの理念がヨーロッパ全体に広まり、国家権力や旧社会秩序からの解放を求める運動が促進されました。
19世紀に入ると、国民の権利が徐々に認められ、経済や産業の発展とともに国民統合が進むようになりました。しかし、同時にナショナリズムは反自由主義的な方向に進むこともありました。特に第一次世界大戦を背景に、多くの国々でナショナリズムの高まりが見られました。

冷戦後と現代のナショナリズム

冷戦が終結した後、旧連邦から新たな国家が生まれ、ナショナリズムは再興します。また、グローバリゼーションの進展により、経済格差の増加や社会の変化がナショナリズムの高まりを後押ししています。そして、COVID-19パンデミックの影響で、各国のナショナリズムが顕著になる場面も見られました。
ナショナリズムが国家と民族を重視する一方で、他民族との摩擦や対立を引き起こすこともあります。そのため、政策や社会運動の文脈においてもナショナリズムは多義的であり、その効果は時折矛盾することがあります。

主な学問的視点

ナショナリズムに関しては、様々な学者が異なるアプローチを取っています。ルナンは「国民とは何か」という講演で、ナショナリズムは精神的な原理に基づくものであると主張しました。また、アンダーソンは「想像の共同体」という概念を通じて、ナショナリズムの形成を論じています。スミスの研究も重要で、エトニ（民族集団）の概念を持ち出し、ナショナリズムとの連続性を探求しました。

結論

ナショナリズムは多様な地域や歴史の中で変化しつつ存在しており、各国の社会や文化に深く根付いています。国家の形成や国民意識の構築において重要な役割を果たす一方、その排他的な側面には慎重に対処しなければなりません。近未来においても、ナショナリズムの動向は国際政治や社会において引き続き重要なテーマとなるでしょう。

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