ハリー・ポッターと賢者の石 (映画)

ハリー・ポッターと賢者の石

『ハリー・ポッターと賢者の石』（英題: Harry Potter and the Philosopher's Stone、米題: Harry Potter and the Sorcerer's Stone）は、J・K・ローリングの同名小説を原作とした2001年のファンタジー映画です。監督はクリス・コロンバス、脚本はスティーブ・クローブス、製作はデヴィッド・ハイマンが務めました。この作品は、世界中で愛されるハリー・ポッター映画シリーズの記念すべき第一作目であり、ダニエル・ラドクリフがハリー・ポッター役、ルパート・グリントがロン・ウィーズリー役、エマ・ワトソンがハーマイオニー・グレンジャー役として出演しています。

ストーリー

物語は、ハリーが孤児として暮らしていたある日、自分が魔法使いであることを知るところから始まります。彼はホグワーツ魔法魔術学校に入学し、そこでロンとハーマイオニーという生涯の友と出会います。ハリーは、魔法界で繰り広げられる冒険と陰謀に巻き込まれながら、自身の出生の秘密や宿敵ヴォルデモート卿との戦いに立ち向かうことになります。映画は、ハリーがホグワーツで初めて魔法を学び、クィディッチに熱中し、禁じられた秘密を探る中で、友情と勇気を育んでいく姿を描いています。

制作の背景

ワーナー・ブラザースは1999年に原作本の映画化権を100万ポンドで取得しました。製作は2000年にイギリスで始まり、スティーヴン・スピルバーグなどの監督候補の中からコロンバスが監督に選ばれました。原作者のローリングは、出演者全員がイギリス人またはアイルランド人であることを強く希望しました。主要キャストの3人は、2000年8月の公開オーディションで選ばれました。

監督の選定

当初、スティーヴン・スピルバーグが監督候補に挙がっていましたが、彼は最終的に辞退しました。スピルバーグは、この作品をアニメーション映画にしたり、原作の続編要素を取り入れたいと考えていたとも伝えられています。ローリングは、スピルバーグの起用を拒否したという噂を否定しています。

コロンバス監督は、子役の選考において、自身の監督作品『ホーム・アローン』での経験から、両親の人柄も考慮に入れて選定を進めました。これにより、子役を取り巻く環境にも配慮したキャスティングが行われました。

撮影

撮影は2000年9月から2001年3月にかけて、リーブスデン・フィルム・スタジオとイギリス各地の歴史的建造物で行われました。アニック・カースルやグロスター大聖堂などが、ホグワーツのロケ地として使用されました。また、プリベット通りのシーンは、バークシャー州ブラックネルで撮影されました。

公開と評価

『ハリー・ポッターと賢者の石』は、2001年11月10日と11日にイギリスとアイルランドで試写会が開催され、その後、11月16日にアメリカ、カナダ、台湾でも公開されました。この映画は評論的にも商業的にも大きな成功を収め、公開時の全世界興行収入は9億7400万ドルに達し、再公開を含めると10億ドルを超えました。2001年の最高興行収入映画となり、当時の歴代興行収入ランキングでも2位を記録しました。また、第74回アカデミー賞では、作曲賞、美術賞、衣装デザイン賞を含む多くの賞にノミネートされました。

日本では、『千と千尋の神隠し』、『タイタニック』に次ぐ当時第3位の興行成績を収めました。

キャストとスタッフ

主要キャスト

ハリー・ポッター: ダニエル・ラドクリフ
ロン・ウィーズリー: ルパート・グリント
ハーマイオニー・グレンジャー: エマ・ワトソン

主要スタッフ

監督: クリス・コロンバス
脚本: スティーブ・クローブス
製作: デヴィッド・ハイマン
音楽: ジョン・ウィリアムズ
撮影: ジョン・シール
* 美術: スチュアート・クレイグ

制作のこだわり

配役

ローリングは、登場人物の配役をイギリス人に限定することを強く求めました。このことが、映画の雰囲気やキャラクターのリアリティを保つ上で重要な役割を果たしました。また、主要キャストの選考には、大規模なオーディションが行われ、多くの子供たちが参加しました。

脚本

脚本を担当したスティーブ・クローブスは、原作への忠実さを最優先に考えました。ローリング自身も脚本の制作に関わり、映画にいくつかのセリフを追加したり、変更を加えたりしました。原作の持つ世界観を損なわないように、細心の注意が払われました。

特殊効果

映画には、数多くの特殊効果が使用されました。フラッフィーなどの魔法生物は、アニマトロニクスとCGアニメーションを組み合わせて制作されました。また、クィディッチのシーンは、視覚効果チームによって迫力のある映像に仕上げられました。

原作との違い

映画版では、原作の一部のエピソードや登場人物が削除されています。例えば、ポルターガイストのピーブズは、カットされました。また、プリベット通りの最初の章は映画にはありません。その他にも、物語の展開やキャラクターの行動について、いくつかの変更が加えられています。

映画音楽

音楽は、ジョン・ウィリアムズが担当しました。彼は、映画のテーマ曲である「ヘドウィグのテーマ」を作曲し、この曲はシリーズ全体を通して使用されました。ウィリアムズの音楽は、映画の雰囲気と世界観を深める上で重要な役割を果たしました。

マーケティング

映画の公開に先立ち、さまざまなマーケティング活動が行われました。ティーザーポスターや特報が公開され、ビデオゲームや玩具などの関連商品も販売されました。また、コカ・コーラとの提携も行われ、大規模なプロモーションが展開されました。

興行収入

この映画は、世界中で記録的な興行収入を上げました。イギリスでは、試写会だけで360万ポンドの収益を上げ、アメリカとカナダでは、最初の週末で9,030万ドルの興行収入を記録しました。世界全体では、9億7400万ドルの興行収入を記録し、再公開を含めると10億ドルを超えました。

批評家の反応

批評家からの評価も概ね好評でした。Rotten Tomatoesでは、200件のレビューに基づいて81%の支持率を得ています。Metacriticでは、36人の批評家に基づいて100点満点中65点を得ています。多くの批評家が、映画の原作への忠実さと、迫力のある映像表現を称賛しました。しかし、一部の批評家からは、テンポの悪さや主演俳優の演技について批判も寄せられました。

受賞歴

この映画は、アカデミー賞、英国アカデミー賞、サターン賞など、数多くの賞にノミネートされ、一部の賞を受賞しました。特に、美術、衣装デザイン、特殊効果などの部門で高い評価を得ました。

映像ソフト

映画は、VHS、DVD、ブルーレイでリリースされました。特別版やアルティメット・エディションも発売され、削除されたシーンや特典映像が追加されています。

まとめ

『ハリー・ポッターと賢者の石』は、J・K・ローリングの原作小説の世界観を忠実に再現した、エンターテイメント性の高いファンタジー映画です。世界中の観客を魅了し、その後のシリーズ作品の成功にも大きく貢献しました。物語、キャスト、特殊効果、音楽、そしてそれら全てが組み合わさることで、映画史に残る傑作の一つとして愛され続けています。

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