ハンダクの戦い

ハンダクの戦い

ハンダクの戦い（アラビア語: غزوة الخندق Ġazwat al-Ḫandaq）は、627年にメディナで行われた、イスラム教成立期において極めて重要な戦闘です。この戦いは、勝利したウフドの戦いの影響を受け、メッカのクライシュ族が中心となり、連合軍を形成してメディナに攻撃を仕掛けた結果、発生しました。ムハンマド率いるイスラム軍は、この戦いによってその権勢を確立しました。この戦闘は「塹壕の戦い」とも称されます。

背景

625年、ウフドの戦いでの勝利を手にしたメッカは、自らの勢力を強化するため、アラビア北西部の遊牧民から騎兵を取り込み、さらにムハンマドによって追放されたユダヤ教徒をも呼び寄せ、1万人以上の軍勢を編成しました。彼らはメディナに向けて進軍を開始しました。一方、ムハンマドはウフドでの経験を活かし、ペルシャ人技術者サルマーン・アル＝ファーリスィーに塹壕の掘削を命じ、メディナ周囲に防衛線を構築しました。この準備により、メッカ連合軍の攻撃に対抗する構えが整えられました。

ハンダクの戦いの詳細

立ち向かうメッカ連合軍は、アラブにおいて伝統的な野戦の戦法、特に騎士同士の一騎討ちを想定していましたが、彼らは突如目の前に現れた塹壕に驚愕しました。連合軍は騎兵部隊による塹壕突破を試みましたが、その試みは成功しませんでした。騎士アムルが一部の従者と共に塹壕内に突入するも、アリーとの一騎討ちの結果、命を落としてしまいます。この敗北により、連合軍の士気が低下し、夜襲もイスラム側の見張りによって察知されるなどして、攻撃は失敗に終わりました。

戦闘が長引くにつれ、メッカ連合軍は焦りを募らせます。彼らはメディナ内部のユダヤ教徒との連携を試み、内外からイスラム軍を同時に攻撃しようとしました。しかし、ムハンマドは戦術として一騎討ちを禁じる指示を出し、陣営内では不満が広がっていきました。メッカの策略は一時的に成功し、メッカとメディナのユダヤ教徒が共同で進撃する協定を結ぶことになりますが、人質の要求が原因で協定は失敗に終わりました。

この攻城戦が三週目に入ると、過酷な環境の中で士気が著しく低下し、メッカ側はついにはメディナ攻略を断念せざるを得なくなりました。結局、メディナのイスラム教徒を6名殺しただけで、メッカ連合軍の試みは無駄に終わってしまいます。

戦後の影響

この大軍を率いる攻撃が失敗に終わったことで、メッカの威信は大きく傷つけられました。一方で、メディナにおけるムハンマドの地位は逆転し、以降メッカは再び攻勢に出ることはありませんでした。ムハンマドは周囲の遊牧民（ベドウィン）をも取り込む形でその勢力を拡大し、時が経つにつれてイスラム軍の影響力は増していきました。この戦闘は、イスラム教徒の士気と団結を強化する重要な契機となりました。

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