ハンダラ

ハンダラは、パレスチナの風刺漫画家ナージー・アル＝アリーが創造した、10歳の少年を模したパレスチナの象徴的なキャラクターです。パレスチナ人そのものを擬人化した存在とされ、パレスチナのアイデンティティと抵抗の象徴として、国際的にも広く認知されています。

誕生と背景
ハンダラは、1969年にクウェートで生活していたナージー・アル＝アリーによって生み出されました。1973年に現在の形となり、アル＝アリーの漫画の代表作として、パレスチナ人にとって重要なシンボルとなっています。名前の由来は、アラブの砂漠に生えるコロシントという植物から来ており、その実は非常に苦く、パレスチナ人の苦難を象徴しています。

象徴的な意味
ハンダラの10歳という年齢は、1948年のナクバ（パレスチナからの強制退去）によって故郷を追われたアル＝アリー自身の年齢を表しています。彼は、故郷に帰還するまで成長しないと語っており、ハンダラは時間という概念を超えた、普遍的な存在として描かれています。また、背を向け両手を組んだ姿は、「アメリカ流の解決策」や「地域の否定的な潮流」に対する拒絶を表し、ボロボロの服と裸足の姿は、難民キャンプの子供たち、つまり貧しい人々への連帯を示しています。ハンダラは、「大義の象徴」として、パレスチナだけでなく、世界中の人道的な問題に対する抵抗の象徴として捉えられています。

ハンダラの姿
初期のハンダラは正面を向いていましたが、1973年の十月戦争以降は、背を向け、両手を後ろに組んだ姿で描かれるようになりました。このポーズは、彼の内なる抵抗と、社会に対する批判的な姿勢を表していると考えられています。また、ハンダラの髪は、ハリネズミの棘のように立っており、困難に立ち向かう決意を示していると解釈されています。

影響とレガシー
ハンダラの創作から数十年が経った現在でも、その影響力は衰えていません。パレスチナの壁や建物、難民キャンプなど、至る所に描かれており、タトゥーやジュエリーのモチーフとしても人気があります。国際連合もハンダラを「パレスチナ難民と彼らが耐え続ける不正義の象徴」として認識しています。

ナージー・アル＝アリーの言葉
ナージー・アル＝アリーは、生前のインタビューで「私が死んでも、ハンダラは死なない。私が死んでも、ハンダラを通じて生き続けることを願う」と語っており、ハンダラが彼の遺志を継ぐ存在であることを示唆しています。

現在のハンダラ
ハンダラのモチーフは、パレスチナ人の抵抗の象徴として、今日も様々な形で使われています。ヨルダン川西岸地区の分離壁のグラフィティ・アート、ガザ地区、パレスチナ難民キャンプの壁や建物に描かれるだけでなく、イスラエルのアートワークにも登場し、パレスチナ問題を提起する役割を担っています。ハンダラは、単なる漫画のキャラクターとしてだけでなく、パレスチナ人のアイデンティティと苦難を体現する、歴史的な存在として、これからも語り継がれていくでしょう。

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