ハンツビル病院トラム・システム

ハンツビル病院トラム・システムは、アメリカ合衆国アラバマ州ハンツビルに位置するハンツビル病院システム複合体の一部を担う、自動運転旅客輸送システム（Automated People Mover, APM）です。このシステムは、延長580m（約1,890フィート）の高架コンクリート製ガイドウェイ上を走行し、ハンツビル病院の婦人科および小児科棟と主要棟との間の連絡手段を提供しています。

完成当時、このAPMシステムは、デューク大学医療センター患者高速輸送機関に次いで、米国において2番目に導入された病院向けのピープル・ムーバー・システムとなりました。また、2010年1月時点では、アラバマ州内で運用されている唯一の完成済みAPMシステムとして特筆されます。

概要

このシステムは、ポマとオーティス・エレベータ・カンパニーの合弁事業であるポマ＝オーティス・トランスポーテーション・システムズによって開発されました。建設はブラスフィールド・アンド・ゴリーが手掛け、総額1,090万米ドルの費用をかけて2両編成のシステムが構築されました。走行路となる2本の580mのコンクリート製ガイドウェイは、地上から約9.1m（30フィート）の高さに設けられた高架構造です。

システムの運行には年間約28万米ドルの費用がかかり、1日あたり平均約2,200人の乗客を輸送しています。車両はスイスのガングロフ社が設計しました。各車両は、着席3名と立席38名の合計41名の乗客を収容可能です。さらに、患者搬送のニーズに対応するため、病院で使用される最大のベッドを車両内に収容できるよう特別に設計されています。

システムは東西方向に運行しており、主要なハンツビル病院の建物と、プラザ・リソース・センターおよびフランクリン・メディカル・タワーの中間地点にある停留所、そしてハンツビル病院婦人科および小児科棟の間を結んでいます。

運行モードとして、利用者の目的地に合わせて「ローカル・モード」と「エクスプレス・モード」の二種類が用意されています。

ローカル・モード: 主に北側のトラックを使用し、全ての4つの停留所に停車します。
エクスプレス・モード: 主に南側のトラックを使用し、両終点間をノンストップで走行します。

歴史

ハンツビル病院にトラム・システムを導入するという構想は、1997年中頃に初めて提唱されました。この計画は、敷地内の慢性的な駐車場不足への対応と、広大な病院キャンパス内に点在する建物間を円滑に連絡するための解決策として浮上しました。また、1994年に行われたハンツビル病院と旧ヒューマナ病院の統合・再編も、システム開発の大きな要因となりました。この統合により、重複する医療サービスの整理が進む中で、施設間の患者や医療従事者の容易な移動手段を確保する必要が生じたためです。

1998年12月には、システム建設に必要な一部の敷地利用に関する承認をハンツビルゾーニング調整委員会から得たことで、計画が具体的な段階へと進みました。2000年初頭には、システム建設が開始され、2001年夏には開業が実現すると見込まれていました。しかし、建設の遅れや、2001年 9月11日に発生した同時多発テロ事件後の警備体制強化の必要性などが影響し、システムの開業は2002年 6月19日まで見送られました。

トラム・システムの運用開始は、病院の交通体系に大きな変化をもたらしました。2004年までには、年間約4,500回に及んでいた施設間の救急車による患者搬送を不要にし、さらに主要施設間を運行していた2台の専任シャトルバンも廃止することが可能となりました。車両移動回数の大幅な削減が評価され、ハンツビル病院は2004年にハンツビル市大気汚染防止委員会より、産業大気汚染防止功労賞を受賞しています。

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