ハンナ・リデル

ハンナ・リデル：ハンセン病救済に生涯を捧げた英国人宣教師

ハンナ・リデル（Hannah Riddell, 1855年10月17日 - 1932年2月3日）は、イギリスの宣教師であり、日本のハンセン病の歴史に大きな足跡を残しました。1895年、熊本に日本初のハンセン病専門病院である回春病院を設立し、患者の救済と社会啓発に尽力しました。

生涯

ロンドン郊外で労働者階級の家庭に生まれたリデルは、母親と女子私立学校を経営していました。しかし、学校経営は破綻し、英国聖公会宣教協会（CMS）に入り、リバプールのYWCA協会の婦人校長を務めました。35歳の時、CMSの宣教師として日本へ派遣され、熊本でハンセン病患者と出会い、その救済を決意します。

回春病院の設立

リデルは、教会組織を通じてハンセン病病院の設立を目指し、奔走しました。関係者との交渉は難航しましたが、1895年11月12日、ついに回春病院が完成しました。しかし、病院運営を巡り教会との対立が深まり、最終的に教会から独立して病院を経営することになります。教会からの独立は、自由な寄付を募ることを可能にしました。

経済的な危機に見舞われた際には、大隈重信や渋沢栄一らの支援を受け、全国的なハンセン病問題の啓発活動を展開しました。1905年には、銀行会館で有識者会議が開かれ、日本のハンセン病対策が討議されるとともに、リデルへの経済的支援が決定されました。これにより、回春病院は公的な補助も受けられるようになり、経営は安定しました。

慈善活動と影響

リデルは、上流階級との交流を積極的に行い、帝国ホテルに滞在したり、軽井沢で避暑をしたりするなど、病院を支えるための資金調達に奔走しました。また、光田健輔のハンセン病隔離政策に対して、キリスト教の精神に基づいた独自の主張を展開しました。

患者に対しては徹底した禁欲を強制し、男女の交流を厳しく制限しました。これは、当時のハンセン病に対する偏見と、性的な要素が病気の拡大を招くと考えられていたためです。沖縄のハンセン病患者への支援も行い、クリスチャンの患者を派遣しました。

1932年2月3日、リデルは76歳で生涯を閉じました。彼女の遺志は、後継者のエダ・ハンナ・ライトに引き継がれました。

人物像と謎

リデルの教育歴は不明な点が多く、ハンセン病患者救済の動機についても諸説あります。本妙寺で初めて患者を見たという話も、時期や状況にいくつかの矛盾があります。しかし、彼女のハンセン病患者に対する献身的な姿勢は、多くの人々に感銘を与え、日本のハンセン病対策に大きな影響を与えたことは間違いありません。

リデルは、政治的な手腕にも長けており、本田増次郎や金沢久らの協力を得て、回春病院の設立を実現しました。また、皇族や実業家など、様々な分野の人々から支援を受けました。

患者からは慕われる一方で、その厳格な性格から批判を受けることもありました。しかし、患者たちは、リデルのおかげで人間としての誇りを取り戻すことができたと感謝していました。

リデルの遺産

ハンナ・リデルは、日本のハンセン病の歴史において、重要な役割を果たした人物です。彼女の設立した回春病院は、患者の治療と社会復帰を支援する施設として、長年にわたり貢献しました。リデルの精神は、現在もリデル・ライト記念館や社会福祉法人リデルライトホームなどを通じて受け継がれています。

彼女の生涯は、困難な状況においても、信念を持って行動することの重要性を教えてくれます。

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