ハーゲン弦楽四重奏団

ハーゲン弦楽四重奏団（Hagen Quartett）

ハーゲン弦楽四重奏団は、クラシック音楽界において現代最も重要なアンサンブルの一つとして高く評価されている弦楽四重奏団です。このカルテットは、オーストリアの音楽都市ザルツブルクで誕生しました。その結成には、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団のヴィオラ奏者であったオスカー・ハーゲン氏の家族が深く関わっています。カルテットの黎明期を担ったのは、オスカー氏の子息であるルーカス、アンゲリカ、ヴェロニカ、そしてクレメンスという四人の兄弟姉妹でした。

結成と初期の歩み

ハーゲン家の兄弟姉妹によってザルツブルクで結成されたカルテットは、早くからその音楽的な才能を地元で認められていました。特に、年少のメンバーたちの瑞々しい感性と確かな技術には、周囲から大きな期待が寄せられていたと言います。しかし、プロフェッショナルなアンサンブルとしての活動を開始するにあたり、初期のメンバーであった長女アンゲリカ・ハーゲン氏（第2ヴァイオリン）は、カルテットとしてのキャリアを断念するという選択をしました。

国際舞台での成功と録音活動

ハーゲン弦楽四重奏団が国際的な注目を集める大きなきっかけとなったのは、相次ぐコンクールでの輝かしい成績でした。1981年にはロッケンハウス室内楽祭にて審査員賞と観客賞を同時に獲得し、その翌年、1982年には権威あるポーツマス国際弦楽四重奏コンクールで優勝という快挙を達成しました。これらの成功が彼らを世界的な舞台へと押し上げました。

コンクールでの実績を礎に、彼らは世界有数のメジャーレーベルであるドイツ・グラモフォンと契約を結びます。以降、実に長きにわたり、同レーベルから数多くのアルバムを精力的に発表してきました。彼らがドイツ・グラモフォンよりリリースした録音は、その卓越した演奏技術と深い音楽解釈によって、多くの批評家から絶賛され、ベートーヴェンやモーツァルト、シューベルトといった古典から、バルトークやリゲティなどの近現代作品に至るまで、幅広いレパートリーにおいて高い評価を得ています。これらの録音は、ハーゲン弦楽四重奏団の世界的な地位を確立する上で極めて重要な役割を果たしました。

メンバーの変遷と現在の構成

結成当初、第2ヴァイオリンを担当していたアンゲリカ氏が抜けた後、そのポジションにはアネッテ・ビク氏が加わりました。そして、1987年秋からはライナー・シュミット氏が現在の第2ヴァイオリン奏者としてメンバーに名を連ねています。興味深い共通点として、アネッテ氏とライナー氏はいずれも、彼らの出身校であるザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学において、名教師ヘルムート・ツェトマイヤー教授のもとで研鑽を積んでいます。この第2ヴァイオリンの交代を経て、ルーカス・ハーゲン（第1ヴァイオリン）、ライナー・シュミット（第2ヴァイオリン）、ヴェロニカ・ハーゲン（ヴィオラ）、クレメンス・ハーゲン（チェロ）という現在の不動のメンバー構成となりました。

現在の活動と後進の指導

ハーゲン弦楽四重奏団は、1984年には世界の音楽シーンで最も重要なイベントの一つであるザルツブルク音楽祭への鮮烈なデビューを飾り、以降も同音楽祭を含む世界中の主要なコンサートホールや音楽祭に定期的に出演し、その変わらぬ高い演奏能力を示し続けています。

結成30周年を迎えた2011年には、長年録音活動を行ってきたドイツ・グラモフォンを離れ、ドイツの新興レーベルであるmyrios classicsへと移籍しました。この移籍は、彼らの芸術性のさらなる深化を示すものとして注目を集めており、myrios classicsからも意欲的な録音を発表しています。

また、現在のメンバーである四人は、活動拠点であるザルツブルクのモーツァルテウム音楽大学において、後進の指導にも力を入れており、教授として教鞭をとっています。演奏活動だけでなく、次世代の音楽家育成にも貢献しているのです。結成から数十年を経た現在も、ハーゲン弦楽四重奏団は、その円熟した音楽性、揺るぎないアンサンブルによって、世界中の聴衆を魅了し続けています。

現在のメンバー

ルーカス・ハーゲン（第1ヴァイオリン） Lukas Hagen
ライナー・シュミット（第2ヴァイオリン） Rainer Schmidt
ヴェロニカ・ハーゲン（ヴィオラ） Veronika Hagen
クレメンス・ハーゲン（チェロ） Clemens Hagen

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