ハートビート (坂本龍一のアルバム)

ハート・ビート (Heartbeat)

坂本龍一のオリジナルアルバム「ハート・ビート」は、1991年10月21日に発表された彼の9作目の作品です。このアルバムは、ハウス・ミュージックのリズムと手法を大胆に取り入れたことで知られています。坂本自身は、このハウスの4つ打ちビートが心臓の鼓動のような安定したリズムと結びつくことを、胎内回帰願望の一種と捉えました。

アルバムのジャケットはオレンジを基調にした坂本の顔のポートレートが使用されており、初回CDには特製の折り紙仕様のブックレットが付属しています。しかし、そのブックレットは糊付けされているため完全には開けない設計となっており、使い勝手には難がありました。

収録曲の概要

1. Heartbeat

この曲の作詞はジェフリー・コーヘン、作曲は坂本龍一と富家哲が担当しました。もともと仮タイトルは「バルトーク」でした。坂本はネナ・チェリーにこの曲のヴォーカルを依頼しましたが、彼女からは断られてしまいました。坂本は、アルバム『US』に収録することを考えましたが、収録時間の関係で実現しませんでした。

2. Rap the World

作詞はSuper DJ Dmitry、作曲は坂本とJungle DJ Towa Towaです。この曲のラップはロシア語で、コミュニケーションを促す内容になっています。サンプリングされたフレーズは２つのCMから抽出されており、ジミ・ヘンドリックスの楽曲のイントロもループされています。

3. Triste

マルコ・プリンス、FFFと坂本が作詞・作曲を手掛けた即興曲で、湾岸戦争をテーマにした内容です。レコーディング初日の偶然の出会いから生まれたこの曲は、FM局が使用したことでも知られています。

4. Lulu

この楽曲は、映画『危険な関係』のサウンドトラックを意識して作られました。サックスはラウンジ・リザーズのジョン・ルーリーが演奏しています。

5. High Tide

鈴木慶一が作詞し、坂本が作曲しました。メロディは朝に思いついたもので、歌詞には湘南と東京湾がテーマとして描かれています。

6. Song Lines

この曲は、のちにペドロ・アルモドバルの映画『ハイヒール』の主要テーマとなるものです。

7. nuages

アラブ民謡に基づくこの曲は、アルジェリア出身のフーリア・アイシが歌っています。彼女のバックグラウンドが色濃く反映されています。

8. Sayonara

このシングルは、坂本自身を邦楽アーティストとしてのイメージを意識して作成されました。タイトルは日本語の中でも特に知られている言葉を採用したものです。

9. Borom Gal

ユッスー・ンドゥールとのコラボレーションによるこの曲も収録されています。

10. Epilogue

この曲は、映画『シェルタリング・スカイ』のサウンドトラックを制作中のストレス解消を目的に即興で作られました。

11. Tainai Kaiki

アート・リンゼイの声を重ねた即興曲であり、海外版ではデヴィッド・シルヴィアンがメロディと作詞を担当しています。

「ハート・ビート」は、音楽的冒険と新しい表現を追求した坂本龍一の意欲的な作品であり、今なお多くのファンに愛されています。

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