ハートブレイカー (2010年の映画)

ハートブレイカー (L'arnacœur)

『ハートブレイカー』（原題：L'arnacœur、英題：Heartbreaker）は、2010年にフランスで公開されたコメディ映画です。原題の「L'arnacœur」はフランス語で「色男」や「詐欺師のような魅力的な男性」といった意味合いを持ち、物語の中心となる主人公の職業とキャラクター性を表現しています。

物語の主人公は、アレックス・リピ（演：ロマン・デュリス）という名の男性です。彼は、依頼人の要望に応じて恋愛関係を破局させることを専門とする「プロの別れさせ屋」として活動しています。しかし、その華やかな仕事の裏で、アレックス自身は多額の借金を抱えており、常に金銭的な問題を抱えています。彼の仕事は、ターゲットとなる女性の不満や隠された願望を見抜き、巧みに付け入ることで関係を壊すという、ある種の策略家としての能力を必要とします。

そんなアレックスのもとに舞い込んだ新たな依頼は、これまでの仕事の中でも特に難易度が高く、かつ破格の報酬を伴うものでした。依頼主は、莫大な財を築き上げた大富豪ヴァン・デル・ベック（演：ジャック・フランツ）。彼の依頼内容は、娘であるジュリエット・ヴァン・デル・ベック（演：ヴァネッサ・パラディ）と、彼女の婚約者である裕福なイギリス人実業家ジョナサン・オルコット（演：アンドリュー・リンカーン）との結婚を阻止することでした。二人の結婚式は、わずか10日後に地中海の美しい街、モナコで行われる予定です。アレックスは、この短期間でミッションを成功させるため、結婚式が執り行われるモナコへと向かうことになります。

アレックスの仕事は、彼一人で行われるわけではありません。彼には、強力なサポートチームがいます。姉のメラニー（演：ジュリー・フェリエ）は、ターゲットに接近するために様々な人物になりすます変装の名人。そして、その夫であるマルク（演：フランソワ・ダミアン）は、情報収集や技術的なサポートなど、裏方としてチームを支える重要な役割を担っています。彼らのチームワークが、アレックスの別れさせ屋としての活動を可能にしています。

今回のターゲットであるジュリエットは、父親に反発する一面を持ちつつも、表面上は非の打ち所のない完璧な令嬢に見えます。30歳を迎える彼女は、婚約者ジョナサンとの関係も良好なようです。しかも、今回の依頼には「ターゲットである女性を傷つけてはならない」という制約が付いています。アレックスは、この難しい条件の中でジュリエットの心を動かすため、彼女の「弱点」を探り出そうとします。彼女の隠れた好みや、無意識のうちに惹かれるものに焦点を当てるのです。

物語の中で、ジュリエットの「弱点」として具体的に挙げられるのが、特定の音楽や映画です。例えば、ジョージ・マイケルのヒット曲「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ (Wake Me Up Before You Go-Go)」や、青春映画の金字塔『ダーティ・ダンシング』、そしてその挿入歌である「タイム・オブ・マイ・ライフ (I've Had The Time Of My Life)」などが、アレックスが彼女の心に近づくための重要な要素として登場します。アレックスはこれらの要素を巧みに利用し、ジュリエットとの距離を縮めていきます。

また、物語には個性豊かな脇役たちが登場し、ストーリーを盛り上げます。ジュリエットの親友であるソフィー（演：エレーナ・ノゲラ）は、奔放な性格でアレックスに積極的にアプローチを仕掛けます。一方、アレックスが抱える借金の取り立て人である大男ゴラン（演：ジャン＝マリー・パリ）は、常にアレックスの行動を監視しており、彼に更なるプレッシャーを与えます。アレックスに仕事を紹介するドュトゥール（演：ジャン＝イヴ・ラフェッス）も、彼らの活動において欠かせない存在です。

この映画は、プロの別れさせ屋がターゲットの結婚を阻止しようと奮闘する中で巻き起こる騒動と、主人公とヒロインの間に芽生える感情を描いた、ユーモアとロマンティックな要素が詰まった作品です。果たしてアレックスは、結婚式までのタイムリミット内にミッションを成功させ、借金から解放されることができるのか。そして、「女性を傷つけない」という彼のルールは守られるのでしょうか。モナコを舞台に繰り広げられる、軽快で先の読めない展開が見どころです。

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