ハート泥棒

ハート泥棒

「ハート泥棒」は、1970年代に一世を風靡した人気アイドルグループ、キャンディーズによって歌唱された楽曲です。彼女たちのキャリアにおいて通算11枚目となるシングルとして、1976年9月1日にリリースされました。この楽曲は、数々のヒット曲を生み出した作詞家、林春生と、同じく多くの名曲を手がけた作曲家、すぎやまこういちのコンビによって生み出されました。編曲は船山基紀が担当しています。演奏時間は3分28秒です。

楽曲の大きな特徴として挙げられるのは、その独特な構成です。歌唱の大部分、特にメインメロディーが進行する箇所では、メンバー3人が同じメロディーラインを歌うユニゾンが用いられています。しかし、楽曲のクライマックスとも言えるサビの部分や、間奏などに挿入されるスキャットにおいては、メンバーそれぞれの声部が独立し、美しい3声和音を形成しています。このユニゾンと3声和音の対比が、「ハート泥棒」の音楽的な魅力の一つとなっています。

商業的な成功という点では、当時のCBS・ソニーの記録によると、キャンディーズが惜しまれつつ解散コンサートを行った時点での累計売上は19万枚を数えました。これは当時の音楽市場において、アイドルグループのシングルとしては堅調な売上枚数と言えるでしょう。

ファンにとって特に印象深いのは、この楽曲がグループの歴史において極めて重要な場面で披露されたという事実です。それは、1978年4月4日に後楽園球場で行われた、グループの活動に終止符を打つことになった解散コンサート「ファイナルカーニバル」です。この記念すべきコンサートにおいて、「ハート泥棒」は、数あるシングル曲の中から最初にパフォーマンスされた楽曲として選ばれました。このことからも、グループやファンにとって、この楽曲が持つ意味合いの大きさがうかがえます。

このシングルのカップリング曲、いわゆるB面には「今がチャンスです」が収録されています。この楽曲も、A面と同様に作詞は林春生が、作曲はすぎやまこういちが担当しています。編曲はあかのたちおが手がけ、演奏時間は3分40秒です。こちらも当時のキャンディーズの音楽性を示す重要な楽曲の一つと言えます。

後年には、他のアーティストによるカバーバージョンも存在します。例えば、1979年にリリースされたLPアルバム『キャンディーズ・ディスコ・ヒート』の中では、クリスタル・スリーがこの「ハート泥棒」をカバーしています。このカバーバージョンでは、MITSU NANAMIによって英語に訳された歌詞で歌唱されており、原曲とはまた異なる雰囲気を楽しむことができます。

さらに、「ハート泥棒」は、キャンディーズの軌跡を辿る上で重要な楽曲として、後年のベストアルバムにもその名を見せています。代表的な例として、『GOLDEN☆BEST キャンディーズ』が挙げられます。このアルバムのジャケット写真には、このシングルのジャケット写真に使用されたものとは別のカットが採用されており、楽曲自体の重要性と共に、シングルのビジュアルもまたファンの間で記憶されていることが示唆されます。

このように、「ハート泥棒」は、その印象的な楽曲構成、商業的な成功、そしてグループの歴史における特別な位置づけといった様々な側面から、キャンディーズの楽曲の中でも特筆すべき一曲と言えるでしょう。

もう一度検索