ハーモニウム

ハーモニウムとは

ハーモニウムは、フリーリード（自由簧）を用いた鍵盤楽器の一種で、英語圏では「リードオルガン」とも呼ばれます。この楽器は、パイプオルガンの高額な設備投資を避け、アコーディオンのようなリードを用いてオルガンの代替として開発されました。足踏み式の送風によってリードを振動させ、音を出す仕組みを持っています。

歴史

ハーモニウムは、当初「パーラーオルガン」「パンプオルガン」「キャビネットオルガン」など、さまざまな名称で呼ばれていました。これらの楽器は、基本的にはフリーリードを用いて足で空気を送り発音するという点で共通しています。初期は一段鍵盤のものが主流でしたが、需要の増加に伴い二段鍵盤、チェレスタ付き二段鍵盤、さらには電気モーター付きペダル鍵盤を備えた製品も登場しました。

20世紀初頭には、「芸術的ハーモニウム（Kunstharmonium）」と称されるほどに進化し、オルガンを模した様々なストップ（音色を切り替える装置）が備えられました。特に特徴的なのが「プロロンジュマン（Prolongement）」と呼ばれる特殊装置で、これは鍵盤を一回押すと音が自動的に持続する機能です。この持続音に乗せてカンティレーナを歌う形式の作品も生まれました。

しかし、本物のパイプオルガンの音色には及ばず、また、1980年代以降にはシンセサイザーで容易に音色を模倣できるようになったため、ハーモニウムは次第に衰退していきました。現在では、マックス・レーガーやジークフリート・カルク＝エーレルトなどの作曲家の作品を演奏するためには、過去に製作された楽器を修理するしか方法がありません。それでも、世界中にはこの楽器に対する熱い情熱を持つ人々がおり、各種財団などが楽器の保存に努めています。

クシシュトフ・ペンデレツキもかつて「ルドンの悪魔」でハーモニウムを使用しましたが、楽器のメンテナンスの困難さや演奏者の減少を理由に、多くの作曲家がこの楽器から離れていきました。

主なメーカーとしては、ミュステル、メイソン・アンド・ハムリン、ティツなどが挙げられます。現在もハーモニウムの製作は細々と続けられていますが、「芸術的ハーモニウム」の再製作は行われていません。

日本におけるハーモニウム

日本の作曲家、大中寅二は「日本のオルガン文化にはリードオルガンがふさわしい」と考え、多数の典礼作品を創作しましたが、必ずしも「芸術的ハーモニウム」を想定していたわけではありません。

近年では、Jan HennigやJohannes Matthias Michelなどによってハーモニウムの復興活動が熱心に行われています。

インド音楽とハーモニウム

インドがイギリスの統治下にあった時代に、ハーモニウムはインドにも輸出されました。その後、インド音楽の伝統に合わせて改良が加えられ、椅子に座って演奏するのではなく、膝の上に置いて演奏できるような軽量な楽器へと変化しました。この改良されたハーモニウムは現在でもインド音楽で広く使われています。

シュルティボックス

シュルティボックスは、インドのハーモニウムを簡易化したような楽器で、単音または和音のドローン（持続音）を鳴らすことに特化しています。

ハーモニウムのために作曲した人々

以下に、ハーモニウムのために作曲した主な音楽家を挙げます。

カミーユ・サン＝サーンス
セザール・フランク
ジョルジュ・ビゼー
マックス・レーガー
アーノルト・シェーンベルク（編曲）
ジークフリート・カルク＝エーレルト
サイモン・ジェフス
大中寅二

関連項目

* オルガン#リード・オルガン族

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