大中寅二

大中寅二の生涯と音楽

大中寅二（おおなか とらじ）は、1896年6月29日に東京で生まれ、1982年4月19日に生涯を閉じた日本の作曲家、オルガニストです。彼の音楽は、教会音楽から歌曲、校歌まで多岐にわたり、日本の音楽文化に大きな足跡を残しました。

生い立ちと音楽への道

東京市芝区三田（現在の東京都港区）で生まれた大中は、大阪府立北野中学校時代に大阪教会で洗礼を受けクリスチャンとなりました。1920年に同志社大学法学部経済学科を卒業後、東京の霊南坂教会でオルガニストとしてのキャリアをスタートさせます。この教会での奉仕は1979年まで、実に59年にも及びました。音楽の道に進むことを決意した大中は、山田耕筰に作曲を師事し、1925年にはドイツへ留学。ベルリンでカール・レオポルト・ヴォルフに師事し、作曲技術にさらに磨きをかけました。

多彩な音楽活動

帰国後は、東洋英和女学院短期大学で教鞭を執る傍ら、教会音楽の作曲に力を注ぎました。また、副科で打楽器を習得し、1942年には満州国建国10周年奉祝交響楽団に打楽器奏者として参加するなど、幅広い音楽活動を展開しました。

特に、1936年にNHK国民歌謡として放送された歌曲「椰子の実」（作詞：島崎藤村）は、その美しい旋律と郷愁を誘う歌詞で広く親しまれ、大中の名前を一般に知らしめました。

教会音楽への貢献

大中は、長年にわたり教会オルガニストを務める中で、礼拝用のリードオルガン曲や賛美歌など、数多くの教会音楽を作曲しました。これらの作品は、現在でも多くの教会で歌い継がれています。彼の教会音楽は、信仰心と音楽的才能が融合したものであり、日本の教会音楽の発展に大きく貢献しました。

家族と後世への影響

作曲家の大中恩は、寅二の息子です。また、サカタインクスの創業者である阪田恒四郎の娘と結婚し、小説家・作詞家の阪田寛夫は甥にあたります。阪田の小説『音楽入門』や児童文学『トラジイちゃんの冒険』には、大中寅二がモデルとして登場しています。

作品一覧（一部）

「大中寅二オルガン聖曲集　第六」（1931）
「オルガン新曲集」（1936）
「椰子の実」（1936）
「卒業式の歌」
「旅愁」
「こころゆたかに」
「花祭りの歌」
「お茶節による前奏と唄」
「牡蠣の殻」（1937）
「白百合」（1938）
「靖国神社の頌」（1940）
「アリューシャンの勇士」
「密林行」
「オルガン聖曲集」（1950）
「かみのめぐみ」（1953）
「わがなみだ」（1953）
「つみのやみ」（1953）
「世のなかに」（1954）
「父の御神よ」（1954）
「オルガン小品集　第二巻」（1960）
「オルガン曲集」（1963）
「新しきいのちうまれぬ」（1965）
「ナザレの村の」（1967）
「みかみのめぐみに」（1967）
「大中寅二幼児の歌」（1967）
ギデオン讃歌（1968）
パイプオルガン曲集（1979）
「オルガン小品集　第一巻」（1983）
「庭上の一寒梅（寒梅の詩）」
「憲政記念館「三権分立の時計（尾崎記念時計塔）」チャイム」

校歌

大中は、数多くの学校の校歌も作曲しました。以下はその一部です。

神奈川県立横浜第三中学校校歌（1927）
大田区立田園調布小学校校歌（1950）
青森県立三本木高等学校校歌（1951）
愛知県立惟信高等学校校歌（1951）
和歌山県立熊野高等学校校歌（1951）
北海道遠軽高等学校校歌（1952）
大田区立萩中小学校校歌（1955）
一宮市立朝日西小学校校歌（1956）
山梨英和中学校・高等学校校歌（1958）
一宮市立南部中学校校歌（1959）
中部大学校歌（1964）
共愛学園中学校・高等学校校歌（1967）
共愛学園幼稚園園歌（1967）
同志社校歌
大阪女学院校歌
東京都立赤坂高等学校校歌
長野県松本美須々ヶ丘高等学校校歌
静岡県西遠女子学園中学校・高等学校創立讚歌
愛知県立小牧高等学校校歌
春日丘中学校・高等学校校歌
福井県立武生高等学校校歌
北九州市立穴生中学校校歌
稲沢市立千代田中学校校歌
代々木ゼミナール校歌
明石市立魚住中学校校歌

外部リンク

国民歌謡「椰子の実」 - NHK名作選

大中寅二は、その生涯を通じて、日本の音楽文化に多大な貢献をしました。彼の音楽は、今もなお、多くの人々に愛され、歌い継がれています。

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