バイオコークス

バイオコークスの概要

バイオコークスは、全ての植物から製造可能な固形燃料で、光合成に由来しています。この燃料は従来のバイオマス燃料と異なり、圧縮強度が非常に高く、高温環境での長時間燃焼が可能な特性を持っており、廃棄物を出さずに生産されるため、石炭の代替として理想的な「ゼロエミッション燃料」です。

製造プロセス

バイオコークスは、まず植物材料を1～3ミリ程度に粉砕し、水分量を5～15%に調整します。その後、特別な装置のシリンダーに充填し、20MPaの圧力で圧縮。その圧縮を続けながら、約180℃に加熱することで成分が化学的に変化し、石炭に似た物質が形成されます。このプロセスにより、バイオコークスは高い化学的安定性と強度を得ることができます。

特徴と利点

バイオコークスの最大の特長は、冷間圧縮強度が高い点です。これは、溶解炉において銑鉄と共に投入されても壊れることがありません。この強度は、従来のバイオマス燃料には見られないもので、輸送や保管時における安全性を向上させています。また、高温環境下でも長時間緩慢に燃焼できるため、火力発電所などでの実用化も期待されています。

さらに、バイオコークスは製造時に廃棄物を出さないため、重量収率が100%で、「ゼロエミッション燃料」としての特性も兼ね備えています。原材料のエネルギーを無駄にすることなく、完全に利用することができるのです。このため、環境負荷を抑えたエネルギー供給が実現可能です。

実証試験と今後の展望

2000年代から近畿大学の井田民男教授によりバイオコークスの研究が進められ、すでに特許も取得されています。2024年には日本ブラックペレット株式会社が過熱水蒸気とスクリュー式炭化装置を使い、世界初となるバイオコークス生産プラントを販売する予定です。このプラントでは、1日100トンのバイオコークスを安定的に生産することが期待されています。

また、バイオコークスは廃棄物の除染にも役立つ可能性があり、福島第一原子力発電所の事故で発生した除染廃棄物をバイオコークスに変えることで、輸送の効率化や安全性の向上が見込まれています。さらに、北海道ではバイオコークスを使ったハウス加温栽培の研究や、杉間伐材を利用したコジェネレーション技術の導入が進められています。

結論

バイオコークスは、その製造過程や性能から見ても、環境負荷の少ないエネルギー源としての可能性を秘めています。今後、実用化が進むことで再生可能エネルギーの一環として広く利用されることが期待されます。バイオコークスの完全な商業化に向けて、様々な実証試験が行われており、その結果によって新たなエネルギーシステムの確立が目指されています。

もう一度検索