バイカモ

バイカモ（梅花藻）

バイカモ（学名: Ranunculus nipponicus var. submersus）は、キンポウゲ科キンポウゲ属に属する多年生の沈水植物です。イチョウバイカモの変種の一つで、ウメバチモという別名や、カワマツ、ミズヒジキ、ナビキモなどの地方名で呼ばれることもあります。ただし、広義には母変種のイチョウバイカモをバイカモと呼ぶこともあります。また、バイカモ類という場合は、バイカモ亜属（Subg. Batrachium）に属する植物を指します。和名は、その花が梅の花に似ていることに由来します。

生育環境と分布

バイカモは、冷涼で流れのある清流中に生育します。静水では育たず、水槽での栽培も難しいとされています。初夏から初秋にかけて、水中で梅の花のような白い花を咲かせます。日本固有種であり、北海道から本州にかけて分布しています。平地から山地までの清流に生育しますが、冷水を好むため、北日本では水路や河川に広く分布する一方、西日本では上流や湧水のある地域に限られます。そのため、多くの都道府県でレッドデータブックに絶滅危惧種として指定されています。バイカモが育つ川は、水質が良いことの指標となります。

形態

バイカモは多年生の沈水植物で、濃緑色の葉は細かく分裂し、流れに沿って1mほどに伸びます。葉身は糸状の裂片となり、水中で束になって生えています。近縁種のイチョウバイカモとは異なり、浮葉は形成しません。葉身の長さは2〜6cm、葉柄は約5mmですが、変異に富んでいます。花期は6〜8月で、葉腋から伸びた3〜5cmの花茎の先に、5枚の白い花弁を持つ直径1〜1.5cmの花を水上で咲かせます。雄しべと雌しべは多数存在し、結実は水中でも起こることが示唆されています。痩果（種子）の大きさは約1.5〜2.2mmです。

生態

バイカモは常緑性で、水中に茎を這わせ、節から不定根を出して水底に定着します。茎の長さは2m近くになることもあります。生育適温は15℃で、25℃を超えると生育が困難になります。ただし、水位が低下した場合は、陸生形に適応することもできます。鳥取県本宮川での調査では、成長のピークは8〜9月で、1日に約8mm伸びるとされています。花期は長く、ほぼ一年中開花が見られますが、6〜7月が最も開花が多い時期です。繁殖は、種子による有性生殖、切れ藻からの無性生殖、水中茎の伸長による栄養繁殖が可能ですが、主に切れ藻と茎の伸長による無性生殖によって繁殖しています。バイカモには水生昆虫が寄生し、ハリヨなどの淡水魚が巣や産卵床として利用することが知られています。

分類

バイカモ類は形態的に類似しており、環境や地域による形態差も大きいため、分類が難しい場合があります。例えば、バイカモとヒルゼンバイカモは非常に類似しており、両者の中間的な形質を持つ個体も確認されています。日本におけるバイカモ類の遺伝的解析では、遺伝的に異なる複数の地域個体群が存在することが示唆されていますが、一方で新潟北部から福島県あたりを境にして南北型に分化しているという研究結果もあります。

人間との関係

バイカモは、清流に生育し、開花期には白い花を咲かせるため、観光資源として活用されている地域がいくつかあります。滋賀県米原市の醒井地区の地蔵川では、バイカモの群落が流域500mにわたって生育しており、夏期には多くの観光客が訪れます。他にも、静岡県三島市の三島梅花藻の里、福島県郡山市の清水川、山形県長井市内の水路などで観光資源として活用されています。宮城県白石市でも、白石城下を中心にバイカモを見ることができます。また、日本や中国では、バイカモ類がウダゼリなどの名称で食用や薬用として利用されることがあります。金魚鉢に入れる金魚藻として使われることもあります。

食用

バイカモは春から秋にかけて（3〜11月ごろ）、水中の茎葉の柔らかい部分を採取して食用にします。ぬめりやアクがなく、シャキシャキとした食感が特徴です。茹でておひたしや酢の物、酢味噌和えにするほか、サラダや味噌汁の具としても楽しめます。

関連種

イチョウバイカモ - 母変種
ミシマバイカモ - 別変種
ヒメバイカモ - 同属別種
ケバイカモ - 同属別種
* チトセバイカモ - 同属別種

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