バイフォビアとは？意味をやさしく解説

バイフォビア：両性愛者への偏見と差別

バイフォビア（biphobia）は、両性愛者（バイセクシュアル）に対する嫌悪感、拒絶、偏見、差別などの感情や行動を指す言葉です。セクシュアルマイノリティに対する偏見を広く示すホモフォビア（homophobia）とは異なり、バイフォビアは両性愛者特有の経験に焦点を当てています。

語源と歴史

バイフォビアは、ギリシャ語の「恐怖」（-phobia）と、ラテン語の「二つの」（bi-）を組み合わせた造語です。ホモフォビアと同様の語形成パターンを持つこの言葉は、1992年にKathleen Bennettによって初めて使用され、「バイセクシュアルに対する偏見」や「バイセクシュアルという生き方に対する軽蔑」を表すために用いられました。その後、この用語は、両性愛者に対する否定的な態度や差別的な行動を包括的に示す言葉として広く認知されるようになりました。

バイフォビアと恐怖症

バイフォビアは、臨床心理学で定義される特定の恐怖症（phobia）とは異なります。恐怖症は、特定の対象や状況に対する過度の恐れや不安を特徴とする精神疾患ですが、バイフォビアは、そのような医学的な意味合いを持つものではなく、社会的な偏見や差別を表現する用語です。外国人嫌悪（xenophobia）と同様に、特定の集団に対する偏見や敵意を示す概念として理解されます。

バイセクシュアルの消去：存在の否定

ヘテロセクシズムが強い社会では、異性愛が規範とされ、同性愛が異常とみなされる傾向があります。このような社会構造の中では、両性愛は存在しない、あるいは無視されるという「バイセクシュアルの消去」という現象が生じます。

これは、異性愛と同性愛の二項対立的な枠組みの中で、両性愛が位置付けにくいためです。両性愛者は、異性愛者や同性愛者から、どちらかのカテゴリーに属すべきだと圧力をかけられることがしばしばあります。同性愛者コミュニティ内部においても、両性愛者の存在が否定的に捉えられる場合があります。これは、両性愛が同性愛への移行段階とみなされたり、真のセクシュアリティではないとみなされたりするなど、様々な理由によるものです。

両性愛者への嫌悪感

バイフォビアは、両性愛者に対する誤解に基づく嫌悪感や偏見を伴います。例えば、両性愛者が異性と同性の両方と恋愛関係を持つ場合、どちらか一方を選ばなければならないという社会的な圧力や、最終的には異性を選ぶ傾向があるという誤った認識が、バイフォビアを生み出す要因となります。

また、同性結婚や同性カップルによる養子縁組が認められていない社会では、子供を持つことを望む両性愛者が異性を選ぶことを余儀なくされる場合があります。異性との恋愛が結婚や出産に結びつく一方、同性との恋愛は性的関係に留まることが多いという誤解も、バイフォビアを助長する要因の一つです。

さらに、社会的に認められた異性愛結婚制度の中で異性と結婚しながら、同性愛者との関係を持つ人々も存在します。このような人々の存在は、バイセクシュアルや同性愛者に対する偏見を増幅させる可能性があります。

まとめ

バイフォビアは、両性愛者に対する複雑な差別や偏見を理解する上で重要な概念です。両性愛者の存在を否定したり、彼らのセクシュアリティを誤解したり、社会的な圧力によって彼らの選択を制限したりするなど、様々な形で現れます。バイフォビアの理解を深めることで、より包括的で多様な社会を実現することに繋がります。

参考文献

何春蕤（ジョセフィン・ホー） (2004-03-22). “Trans-Sexuality: Bisexual Formations and the Limits of Categories” (英語). ジェンダー研究 : お茶の水女子大学ジェンダー研究センター年報 (お茶の水女子大学ジェンダー研究センター) 7: 1-14. ISSN 13450638. https://hdl.handle.net/10083/35592 2023年5月13日閲覧。

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