バカシ半島

バカシ半島領有権問題とは

バカシ半島は、カメルーンとナイジェリアの国境最南端に位置する半島です。この地域を巡っては、両国間で領有権をめぐる紛争が長年にわたり続いています。

紛争の経緯

1993年、ナイジェリアが軍を派遣し、バカシ半島南部を占領したことが紛争の激化を招きました。1996年には、カメルーンの警察部隊とナイジェリアの陸軍部隊が半島内で衝突し、両国間の緊張はさらに高まりました。事態を打開するため、カメルーンは1994年3月29日にチャド湖周辺の国境問題と併せて、国際司法裁判所（ICJ）に提訴しました。

2002年、ICJはカメルーンの主権を認める判決を下しましたが、ナイジェリアはこの判決の受け入れを拒否しました。その後、両国間で国境画定作業が行われ、半島内の30以上の村がカメルーンに引き渡されることとなりました。

紛争の背景

バカシ半島には、1450年頃にカラバル系のエフィク族による王国が成立し、カラバル王国との繋がりを持っていました。1884年9月10日、旧カラバル王がヴィクトリア女王と保護領化の協定を結んだ際、バカシの王国もその範囲に含まれました。

しかし、紛争の根本的な原因は、ギニア湾に突き出すバカシ半島の沖合に、豊富な油田の存在が確認されたことにあります。油田探査が始まる以前には、領有権問題は顕在化していませんでした。南カメルーン問題とは別に、ナイジェリアが実力行使に及んだ背景には、資源を確保したい思惑があったと考えられます。

ICJはカメルーンの領有を認めましたが、原油の貯油層の一部はナイジェリア側にも及んでいることが確実視されています。そのため、カメルーンが油田開発を行う際には、権利問題が再燃する可能性が指摘されています。

今後の展望

バカシ半島領有権問題は、単なる国境紛争に留まらず、資源を巡る争いという側面も持ち合わせています。ICJの判決後も、両国間の緊張は完全に解消されたとは言えません。今後の油田開発の動向によっては、再び紛争が激化する可能性も否定できません。引き続き、両国間の対話と協力が求められています。

参考文献

望月克哉「バカシ半島領有問題をめぐるナイジェリア、カメルーン交渉』『アフリカレポート』36号、pp.27-30, アジア経済研究所 2003年3月
鹿取克章 「バカシ半島領有問題に関するカメルーン・ナイジェリア間の合意について」外務報道官談話 日本国外務省、平成18年6月14日。

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