バキュームフォーム

バキュームフォームとは

バキュームフォーム（真空成形）は、熱可塑性樹脂の板を加熱して軟化させ、型に密着させて成形する技術です。この手法では、樹脂板をヒーターで加熱し、柔らかくなったところで型に吸着させ、冷却して固めることで、型の形状を忠実に再現した成形品を得ることができます。卵のパックや縁日のお面など、身近な製品にもこの技術が使われています。

バキュームフォームの仕組み

バキュームフォームを行うための装置は、主に以下の要素で構成されています。

ヒーター: 樹脂板を均一に加熱するための装置。
フレーム: 加熱された樹脂板を保持するための枠。
成形台: 型を設置するための台。多数の小穴が開いており、真空ポンプと接続されています。
真空ポンプ: フレームと成形台の間の空気を吸引し、樹脂板を型に密着させるための装置。

成形プロセスは以下の通りです。

1. フレームに樹脂板をセットし、ヒーターで加熱して軟化させます。
2. ヒーターを離し、型を設置した成形台の上にフレームを被せます。
3. 真空ポンプを作動させ、フレームと成形台の間の空気を吸引し、樹脂板を型に密着させます。
4. 樹脂板が冷却・硬化したら、型から取り外して成形完了です。

型の種類と成形方法

バキュームフォームには、主に以下の2つの成形方法があります。

雄型成形（ドレープフォーミング）: 凸型の型を使用し、樹脂板を外側から加圧して成形します。
雌型成形（ストレートフォーミング）: 凹型の型を使用し、型に空いた穴から減圧することで樹脂板を密着させます。雌型成形は、型の細部まで正確に再現できるのが特徴です。

型の製造には、従来は木型やNC工作機械が使われていましたが、近年では3Dプリンターも活用されています。これにより、複雑な形状の型も容易に作成できるようになりました。

バキュームフォームの応用例

バキュームフォームは、以下のような幅広い分野で利用されています。

模型: RCカーのボディ、模型船の船体、模型飛行機など、様々な模型のパーツ製造に使用されています。特に、マイナーな航空機のキットなど、プラモデルでは商品化されないような模型の製作に利用されています。
パッケージ: 食品のトレーやブリスターパックなど、製品を保護するためのパッケージ製造に使われます。
* その他: 自動車部品や医療機器など、様々な産業分野で活用されています。

模型製作におけるバキュームフォーム

模型分野では、主に欧米の小規模な模型工房で、スチレン樹脂を使用したキットの製造に利用されてきました。例えば、飛行機模型の場合、胴体の右側、左側、翼の上面、下面の型を作り、バキュームフォームで成形することで、キットが完成します。しかし、雄型成形では表面の細かな凹凸の再現が難しい、雌型成形では成形品が単なる凹凸のある板なので、組み立てには高度な技術が必要です。

また、バキュームフォームでは細い棒状の部品を作るのが難しいため、これらの部品は自作する必要があります。キャノピーのような透明な部品には、塩化ビニルやポリエチレンテレフタラートが使用されます。日本でもガレージキット創成期にはバキュームフォームで作られた製品があり、現在でも少数が生産されています。

バキュームフォームとヒートプレスの違い

真空ポンプを使用せずに、熱で軟化させた樹脂板を型に押し付けるだけで成形する方法は「ヒートプレス」と呼ばれ、バキュームフォームとは区別されます。バキュームフォームはより均一な密着を実現できるため、精密な成形に適しています。

バキュームフォームの最新動向

近年では、家庭でも手軽にバキュームフォームを楽しめるように、穴の空いた吸引装置に原型を置き、掃除機で吸引する簡易的な装置も販売されています。さらに、加圧側を大気圧だけでなく積極的に加圧する方法も開発されており、より高度な成形が可能になっています。

まとめ

バキュームフォームは、比較的簡単な装置で、多様な形状の成形品を製作できる便利な技術です。今後も、様々な分野での活用が期待されています。

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