ポリエチレンテレフタラート

ポリエチレンテレフタレート（PET）について

ポリエチレンテレフタレート（PET）は、ポリエステル系の合成樹脂として広く知られており、その略称は「PET」と呼ばれています。日本語では「ペット」と発音され、ペットボトルの原料としても有名です。この物質は、エチレングリコールとテレフタル酸を脱水縮合することで製造され、エステル結合を多数形成したポリエステルになります。

構造と性質

PETは芳香環を持つ分子構造であり、分子鎖が比較的直線的になるため、流動温度において芳香環や分子鎖の配向が生じやすい傾向があります。結果として、結晶部分を形成しやすくなります。これがPETの特性を活かしたさまざまな用途に結びついています。具体的には、ガラス転移温度が約80℃、および融点が264℃程度と、比較的高い耐熱性を持ちます。

結晶性と非晶性

PETは大きく分けて、非晶性ポリエチレンテレフタレート（A-PET）と結晶性ポリエチレンテレフタレート（C-PET）に分類されます。A-PETは結晶化されておらず、75℃程度の耐熱温度を持ちます。一方、C-PETは添加剤と加熱延伸によって結晶化され、透明度こそ減少しますが、耐熱温度は220℃程度まで向上します。このように、PETはその形態によって異なる特性を持つことが特徴です。

グリコール変性PET

さらに、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート（PET-G）という形式もあり、これはA-PETの劣化防止を目指してエチレングリコールの一部がシクロヘキサンジメタノールに置換されています。これにより、耐熱温度は約200℃に達し、強度や成形性が向上しますが、耐候性に欠けており外部紫外線によって劣化しやすいという欠点もあります。

用途

PETはその特性を活かし、主に飲料容器であるペットボトル、フィルムや磁気テープ基材、衣料用繊維（フリースなど）に利用されています。また、その熱可塑性と結晶性から、他の合成[[繊維]]と比べても比較的高い耐熱性を持ち、リサイクルが進んでいる樹脂の一つです。たとえば、ペットボトルは繊維に再加工されることが頻繁に行われています。

結晶性ポリエチレンテレフタレートは、飲料容器だけでなく、レーザープリンター用のOHPシートや加温用飲料容器などにも用いられています。PET-Gは、高い耐熱性と強度が求められる厚肉成型品や食器洗い機が多用される外食業界でのガラス製品の代用品としても人気があります。

リサイクルと新技術

近年、ポリエチレンテレフタレートを分解する細菌「イデオネラ・サカイエンシス」の発見が注目されています。この細菌から得られた酵素「ペターゼ」はPETを分解する能力を持ち、さらに2018年にはその分解能力を向上させた新たな酵素の開発にも成功しています。2020年には、フランスのトゥールーズ大学の研究者が、リサイクルを促進する新しい酵素の開発に成功したことを発表しました。これらの技術革新は、PETの循環利用促進に寄与することでしょう。

結論

ポリエチレンテレフタレートは、広範な用途と優れた物理的特性を兼ね備えた材料です。それに加え、環境への配慮としてのリサイクル技術の進展が進んでおり、今後の発展に期待が寄せられています。PETは、私たちの生活のさまざまな側面において重要な役割を果たしており、今後もその需要は増え続けるでしょう。

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