バグラデス川の戦い

バグラデス川の戦い：スキピオが魅せた包囲戦術

バグラデス川の戦い（カンピ・マグニの戦い）は、第二次ポエニ戦争中の紀元前203年に、現在のメジェルダ川であるバグラデス川沿いで起こりました。カルタゴの名将ハスドルバル・バルカとシュファクスが率いるカルタゴ軍と、若きスキピオ・アフリカヌス率いるローマ軍が激突し、ローマ軍が戦略的な勝利を収めました。

戦いの背景

ウティカの戦いで敗北したカルタゴは、ケルト人傭兵4,000人を新たに迎え入れました。当初期待していた10,000人には及ばなかったものの、この援軍はカルタゴに希望を与えました。一方、スキピオはウティカの包囲を続けながらも成果を上げられず、周辺地域での略奪と兵士への分配に時間を費やしていました。

戦いの始まり

スキピオは、カルタゴ軍がバグラデス川沿いの内陸、カンピ・マグニ（大平原）と呼ばれる場所に野営していることを知りました。ウティカの包囲部隊を残し、全騎兵と一部の軽歩兵を含む約15,000の兵を率いてカルタゴ軍へ進軍を開始。5日間の行軍の後、カルタゴ軍の野営地から約6キロメートルの地点に到着し、敵の状況を偵察しました。

カルタゴ軍の兵力は、20,000から30,000と推定されています。主力はケルト人傭兵部隊で、カルタゴ騎兵とヌミディア騎兵も配備されていました。しかし、カルタゴ軍はローマ軍と比較して、兵站や地理的知識で劣っていました。ローマ軍が敗北した場合、全滅の可能性もありました。

4日間の小競り合いの後、スキピオはカルタゴ軍に決戦を挑みました。

両軍の配置

カルタゴ軍は、中央にケルト人歩兵を中心とした歩兵部隊、右翼にハスドルバル率いるカルタゴ重騎兵、左翼にシュファクス率いるヌミディア軽騎兵を配置しました。

一方、ローマ軍は、ヌミディア騎兵の正面にガイウス・ラエリウス率いるローマ重騎兵、カルタゴ騎兵にはマシニッサ率いるヌミディア軽騎兵を配置。ケルト人歩兵にはローマ軍団が対応し、その側面に同盟国の歩兵を配置しました。ローマ歩兵は伝統的な配列、つまりハスタティ（前衛）、プリンキペス（主力）、トリアリ（ベテラン）の順に配置されました。

戦闘の経過

戦闘開始と同時に、ローマ軍騎兵が突撃しましたが、カルタゴ軍騎兵はほとんど抵抗せずに撤退しました。ローマ騎兵はカルタゴ騎兵を追撃し、戦場から離脱。カルタゴ側のハスドルバルとシュファクスも騎兵と共に撤退に成功しました。

戦場は歩兵同士の戦いとなり、カルタゴ軍のケルト人歩兵は勇敢に戦い、ローマ歩兵の攻撃に耐え続けました。ケルト兵が逃亡しなかったのは、地理に不案内であり、逃げても生還できる可能性が低いと判断したためと考えられます。

スキピオは、ハスタティがケルト兵と交戦している間に、プリンキペスとトリアリに敵の側面を攻撃させるという大胆な戦術に出ました。彼は、各ケントゥリア（百人隊）の間隔を狭め、3列間の間隔も短縮することで、ハスタティがプリンキペスの背後に退却するスペースをなくしました。そして、プリンキペスとトリアリのケントゥリアに、左右両翼から回り込んでケルト歩兵を包囲するように命じました。この機動が成功し、ケルト兵は包囲され、壊滅しました。

戦いの後

バグラデス川の戦いでの敗北後、カルタゴはローマとの和平交渉を模索しましたが、交渉中にハンニバルがイタリアから帰還し、再びローマとの戦いが決意されました。しかし、ハンニバルはザマの戦いでスキピオに敗れ、第二次ポエニ戦争は終結しました。

バグラデス川の戦いは、スキピオの卓越した戦術が光った戦いであり、その後のザマの戦いへと繋がる重要な一戦となりました。

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