バゲリーア

バゲリーア (Bagheria)

概要

イタリア共和国シチリア自治州に属するパレルモ県に位置する基礎自治体、すなわちコムーネです。この都市は、約5万5千人という人口を擁しており、これは周辺地域を含むコムーネ全体の人口規模として、県都パレルモに次いでパレルモ県内で第2位の大きさとなります。シチリア島の北部沿岸部、美しいティレニア海に面した地域にあり、県都パレルモからは東南東の方向に約14キロメートルと比較的近接しています。

名称の由来

都市の名前である「バゲリーア」は、その起源を古代に遡ります。歴史的な文献によれば、この名はかつてこの地を支配したフェニキア人が使用していた言葉「バイアリア」に由来するとされています。「バイアリア」という言葉には、「海に向かってくだっているところ」という意味が込められており、これはバゲリーアが海岸線に向かって緩やかな丘陵地帯が広がっているという地形的な特徴を正確に表しています。長い年月を経て言葉は変化し、「バゲリーア」という名称が定着しましたが、シチリア語では今も「バーリア（Baarìa）」という古称に近い呼び名が地元住民によって使われています。

地理

バゲリーアは、イタリアの主要な島の一つであるシチリア島の北部に位置し、行政区分としてはシチリア自治州のパレルモ県に属しています。その地理的な特徴として、美しいティレニア海の海岸線に面している点が挙げられます。最も重要な地理的関係は、県都でありシチリア州の中心都市でもあるパレルモとの位置関係です。バゲリーアはパレルモの市街地から南東方向に直線距離で約14キロメートルの地点にあり、これは自動車や鉄道などの交通機関を利用すれば短時間でアクセスできる距離です。コムーネの管轄する区域には、中心市街地のほか、周囲の農村部や小さな集落も含まれています。隣接するコムーネとしては、フィカラッツィ、ミジルメーリ、そしてサンタ・フラーヴィアといった自治体があります。これらの近隣自治体との間には、歴史的、経済的な結びつきが存在します。

歴史と文化

バゲリーアの歴史は古く、特に17世紀から18世紀にかけては、パレルモから来た貴族たちが夏の離宮や別荘をこの地に建設したことで大きく発展しました。彼らが築いた豪華な邸宅の多くが現在も残り、街の景観の一部を形成しています。中でも最も著名な建築物の一つが「ヴィッラ・パラゴニア」です。このユニークな邸宅は、その特異な彫刻や建築様式で「怪物たちのヴィッラ」とも称されることがあり、多くの人々の関心を引いてきました。そして、このヴィッラ・パラゴニアは、1787年にイタリアを旅していたドイツの偉大な文豪ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテが実際に訪れた場所としても知られています。ゲーテは、彼の有名な旅行記『イタリア紀行』の中で、この邸宅の様子やそこに住む人々について詳しく記しており、当時のバゲリーアやシチリアの一端を伝える貴重な記録となっています。

著名な出身者

バゲリーアは、文化や芸術の分野で活躍する多くの才能を育んできました。特に国際的な舞台でその名を知られている人物として、映画監督のジュゼッペ・トルナトーレの名前が挙げられます。アカデミー賞受賞作『ニュー・シネマ・パラダイス』をはじめとする彼の多くの傑作は、世界中の映画ファンに愛されています。トルナトーレ監督は自身の故郷であるシチリア、とりわけバゲリーアの風景や人々の暮らしからインスピレーションを得ることが多く、彼の作品を通じてバゲリーアの美しい景観や温かい人間模様が世界に紹介されることにもなっています。

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