バジル・ホール

バジル・ホールの生涯と業績

バジル・ホール（Basil Hall）は、1788年にエジンバラで生まれたイギリスの海軍将校、旅行者、作家です。彼は海軍でのキャリアを通じて、インド洋や中国、朝鮮、琉球、中南米、北米と多岐にわたる地域を探索しました。その豊富な経験をもとに数多くの著作を残し、特に旅行記は多くの読者に親しまれました。

ホールは、スコットランドの準男爵ジェームズ・ホールを父に持ち、エジンバラのロイヤル・ハイスクールでの教育を経て、1802年に海軍に加入しました。彼は1816年に初代アマースト伯爵が率いる中国使節団の艦長となり、その後朝鮮や沖縄への航海を遂げました。この経験から彼が著した『朝鮮・琉球航海記』は注目を集め、多くの言語に翻訳されました。

朝鮮・琉球航海記の内容

ホールが1816年8月に海軍艦船ライラ号の艦長として行った航海は、イギリスと清国の関係において重要な意味を持ちました。彼は西海岸の西海五島を訪れ、そこに父にちなむ「ジェイムス・ホール群島」と名付けました。また、長項湾に上陸し、そこを「バジル湾」と名付けるなど、地名創造にも貢献しました。特に、朝鮮での出来事は『朝鮮王朝実録』にも記録されています。

彼の琉球滞在は40日間に及び、中でも真栄平房昭という中国語が堪能な官吏との交流が特に印象的でした。ホールは琉球の人々との関わりを深く評価し、地方の文化や生活様式についても詳細に記録しました。彼の熱心な観察により沖縄本島や周辺の島々についての地図も作成され、貴重な歴史的資料となっています。

航海記出版の影響

1818年、ホールは『朝鮮・琉球航海記』をロンドンで刊行し、これが彼の名声を確立する要因となりました。この書籍は琉球や朝鮮に関する詳細な描写を含み、西洋におけるそれらの地域に対する理解に大きな影響を与えました。彼の楽観的な琉球観は、当時の欧米における交易基地としての琉球のイメージ形成に寄与しました。

書籍は多言語に翻訳され、版を重ねるごとに人気が高まりました。この影響は、ホール以降に琉球を訪れた多数の西洋人に引用されるなど、彼の記録が琉球や朝鮮に対する西洋の視点を拓いたことがわかります。後に訪れた西洋人たちはホールの記述に対し異なる見解や修正を加えたものの、その影響力は揺るぎないものでした。

晩年と功績

バジル・ホールは1823年に軍を退役し、1825年には結婚しました。その後も広範囲にわたる旅行を行い、アメリカ合衆国を訪れた際には、その様子を旅行記としてまとめました。しかし、晩年には健康を害し、1842年には精神病院に入院し、1844年にその地で亡くなりました。

ホールの業績はその後も評価され、2016年には沖縄県で彼の来琉200周年を記念した碑が建立されるなど、彼が残した足跡は今も生き続けています。

もう一度検索