バスク系アルゼンチン人

アルゼンチンにおけるバスク移民の歴史と影響

アルゼンチンへのバスク移民は、19世紀末から20世紀初頭にかけて始まりました。彼らは主にバスク地方からアルゼンチンへ移住し、独自の文化や伝統を持ち込みました。この移民の流れは、アルゼンチンがスペイン植民地時代から独立後の国として発展する過程でも重要な役割を果たしました。特に、ブエノスアイレスの再建に関与したフアン・デ・ガライは、バスク人の優れた代表例として知られています。

1853年以降、アルゼンチンは移民を積極的に受け入れ、バスク人にとって新たな希望の地となりました。多くは牧羊業などの生計を立てながら、特に1857年から1940年の間に、200万人以上のスペイン人がアルゼンチンへ移ってきました。この中には、バスク地方の他にガリシアやフランスとの国境地域からの移民も含まれています。

しかし、1937年のアルゼンチン大統領アグスティン・ペドロ・フストはフランコ支持派であり、スペイン内戦の影響を受けたバスク人移民の入国を拒否しました。そのため、ゲルニカの爆撃で祖国を追われた多くのバスク人は、アルゼンチンに逃れることができませんでした。この結果、アルゼンチン国内では様々なバスク支援団体が設立され、バスク文化を守り、伝えるための活動が行われました。

1940年には、ビスカヤ出身の移民2世ロベルト・マリーア・オルティスがアルゼンチン大統領に就任し、彼の寛容な政策により多くのバスク人が亡命を果たしました。その後も、彼の後を継いだラモン・カスティージョ大統領は、バスク人に対して友好的な政策を続け、アルゼンチンでのバスク人コミュニティの形成を助けました。特に、工業都市のギプスコア県エイバル出身者たちは、ハサミや自転車の製造、機械修理業などの産業を営むことに成功しました。

第二次世界大戦中には、アメリカ合衆国の外交官「コリンズ」がアルゼンチンのバスク人センターでスパイ活動を行ったことが知られており、これによりアルゼンチン国内においても大きな問題となりました。バスク系人々はその後のアルゼンチン社会に多大な影響を残し、現在ではアルゼンチンにおけるバスク系人は全体の5%から10%と見積もされています。

アルゼンチンにおけるバスク文化は、ハイアライの競技場やバスク語の学校、さらには様々な文化団体の設立を通じて根付いています。特にブエノスアイレスには、ラウラク・バットと呼ばれる大規模なバスクセンターや、バスク民族の創設者フアン・デ・ガライにちなんで名付けられた協会などが存在し、活発な活動が行われています。また、多くのバスク系姓がアルゼンチンに存在することも、この文化的つながりを証明しています。

バスク系の政治家たちも数多く、アルゼンチンの歴史の中には多くのバスク系大統領が名を連ねています。彼らの影響は政治だけでなく、文化や社会の多くの側面にわたります。アルゼンチンに残るバスクの文化は、その多様性や独自性を持ちながら、今日も息づいています。

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