バストーニュの戦い

バストーニュの戦い：交通の要衝を巡る激戦

バストーニュの戦いは、1944年12月中旬から1945年1月にかけて、第二次世界大戦末期のバルジの戦いの中で、ベルギーの町バストーニュを舞台に繰り広げられた激戦です。ドイツ軍は、連合軍の補給路を断ち、アントワープ港を奪還するために、バストーニュを占領しようとしました。しかし、アメリカ軍は、その戦略的な重要性を理解し、精鋭部隊を投入してこれを死守しました。

戦いの背景

1944年6月、連合軍はノルマンディー上陸作戦を成功させ、パリを解放しました。その後、連合軍はドイツ軍を東へと押し進め、北はオランダのナイメーヘン、南はスイスまで到達しました。秋にはアーヘンを占領し、ついにドイツ国境を越えました。ドイツ軍は連合軍の進撃を食い止めるべく、ベルギーにおいて大規模な反撃作戦を計画しました。アドルフ・ヒトラーは55個師団を投入し、マース川を渡ってアントワープを奪還しようとしました。

一方、連合軍はアルデンヌの地形がドイツ軍の大規模な反撃に適していないと考えていました。また、情報ではアルデンヌに配置されているドイツ軍部隊は疲弊しているとされており、連合軍はドイツ軍が大規模な反攻作戦を行うとは予想していませんでした。アメリカ第28歩兵師団は比較的平穏だと考えられていたバストーニュに配置されました。

ドイツ軍のハッソ・フォン・マントイフェル将軍は、第XLVII装甲軍団にマース川を渡り、バストーニュを占領するよう命令しました。第26国民擲弾兵師団と第2戦車師団が先頭となり、装甲教導師団が後衛を務め、3個師団で11kmの戦線を突破する計画でした。アメリカ軍は第110歩兵連隊の2個大隊でウール川沿いの14kmの防衛線を守っていましたが、部隊は小グループに分かれており、戦力が不足していました。戦闘開始前、豪雨により、バストーニュへ通じる道は1本のみとなっており、そこがドイツ軍の攻撃目標となりました。

戦闘の経過

12月15日夕方、ドイツ第26国民擲弾兵師団はウール川西岸に進出しました。翌朝、ドイツ軍はアメリカ軍の陣地を砲撃し、攻撃を開始しました。ドイツ軍は優勢な戦力で村々を占領しましたが、ワイラーではアメリカ軍の抵抗に遭いました。夕暮れまでにドイツ軍はウール川に架橋し、装甲部隊が戦線に移動を開始しました。しかし、アメリカ軍の抵抗により、ドイツ軍の計画は遅延しました。

12月19日、アメリカ第28歩兵師団司令部はバストーニュへ移動しました。また、ウィルツで最後の抵抗を行い、第110連隊第3大隊がバストーニュに到着しました。アメリカ軍第44工兵大隊はバストーニュ北方に配置されていましたが、ドイツ軍の攻撃によりバストーニュに撤退、橋を爆破しました。残存兵はバストーニュを防衛することとなりました。

第101空挺師団の急行

ドイツ軍の攻勢開始から2日後、アメリカ第28歩兵師団は崩壊寸前でした。第VIII軍団司令官は予備戦力の第10機甲師団B戦闘団を投入しました。また、ドワイト・D・アイゼンハワー連合軍最高司令官も第82空挺師団と第101空挺師団を投入することを決定しました。両師団は経験豊富な部隊で、オランダでの戦闘後、再編期間中でした。第82空挺師団は先発し、第101空挺師団は12月18日午後、ムルムロンを出発し、バストーニュへ向かいました。

12月19日深夜、第101空挺師団の先遣隊がバストーニュ西に到着し、翌朝9時までに連隊全体が到着しました。師団長代理のマコーリフは第501パラシュート連隊を東へ向かわせました。そこでは、ドイツ軍装甲教導師団がアメリカ軍を攻撃していました。第506パラシュート連隊も続き、バストーニュ北部のノヴィルで防御戦を行いました。新着の第327グライダー連隊はバストーニュ西部の防衛を担当しました。

戦闘の激化

12月19日と20日、第506パラシュート連隊第1大隊は、チームデソブリーを支援しました。また、第10機甲師団と合同でタスクフォースを編成し、ノヴィルを防衛しました。第705駆逐戦車大隊のM18駆逐戦車と共に、空挺兵は進撃してきたドイツ第2装甲師団を攻撃しました。M18の迅速な機動力を活かした攻撃は、ドイツ軍に大きな損害を与え、ノヴィルを確保しました。

ドイツ軍はバストーニュで大きな損害を被ると考え、攻撃を躊躇しました。ドイツ軍は前進を一旦停止し、バストーニュを包囲するために有利な地点を探しました。しかし、これは第101空挺師団に防衛を強化する時間を与えることとなりました。2日後、ドイツ第2装甲師団はマース川への進撃を再開しましたが、バストーニュを排除しなかったために、燃料切れを起こし、アメリカ軍に撃破されました。

12月20日、第1大隊がノヴィルから撤退した際、フォイの村落までの道が奪われ、第1大隊はフォイへの道を戦わなければなりませんでした。チームデソブリーは、4分の1の兵士を失い、戦車は4両しか残っていませんでした。

包囲と抵抗

第101空挺師団は、北部に第503パラシュート連隊、ノヴィルに第506パラシュート連隊、東に第501パラシュート連隊、南周辺に第327グライダー連隊を配置し、バストーニュの防御を固めました。工兵と砲兵がその隙間を埋めました。バストーニュ西側は初日に急襲され、医療中隊が大きな損害を受けました。また、第10機甲師団の残存部隊は「火消し部隊」を編成し、バストーニュを死守しました。

12月20日から21日の夜、ドイツ軍はバストーニュを包囲し、南から攻撃を開始しました。ドイツ装甲偵察隊はバストーニュ南西の砲兵陣地を越えましたが、アメリカ軍の反撃により撃退されました。ドイツ第XLVII装甲軍団はバストーニュを包囲した後、マース川方面への進撃を再開しましたが、バストーニュへの攻撃のために第26国民擲弾兵師団の1個連隊を残しました。

12月24日、第26国民擲弾兵師団は第15装甲擲弾兵師団の1個連隊の支援を受け、大規模攻撃を仕掛けましたが、第327グライダー連隊の死守とアメリカ軍の反撃により撃退されました。

バストーニュのアメリカ軍は、ドイツ軍の進撃を阻む大きな障害となり、この孤独な戦いは連合軍の士気を高めました。

バストーニュへ通じる7本の道は12月21日までにドイツ軍により寸断され、アメリカ軍は包囲されました。アメリカ軍は数に圧倒され、冬装備、弾薬、食料が不足していました。悪天候のため、空軍による補給も支援も受けられませんでした。

反撃と解放

12月26日、ジョージ・パットン将軍率いる第3軍の救援部隊がバストーニュに到着し、包囲が解かれました。負傷者は後方へ輸送されました。第101空挺師団は攻撃を再開し、1945年1月9日から17日にかけて、ルコーニュ、ボワ・ジャック、フォイ、ブルシ、ノヴィル、ラシャンプを占領しました。そして、1月17日、バストーニュに第101空挺師団が到着した日の防衛線までドイツ軍を押し戻しました。その後、第101空挺師団は後方へ移動しました。

戦いの中で、第101空挺師団師団長代理のマコーリフ准将は、ドイツ軍の降伏勧告に対し、「NUTS!」と一蹴したことで知られています。戦後、新聞は第101空挺師団を「バストーニュで痛めつけられた奴ら」と紹介しました。

メディアにおけるバストーニュの戦い

1949年のハリウッド映画『戦場』は、第327グライダー連隊の架空のチームを通して、第101空挺師団のバストーニュでの戦いを描いています。また、テレビドラマ『バンド・オブ・ブラザース』の第6話「Bastogne（邦題、衛生兵）」においても、バストーニュの戦いが描かれています。

バストーニュの戦いは、アメリカ軍の勇敢さと不屈の精神を示す象徴的な戦いとして、今も語り継がれています。

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