バチェラー記念館

バチェラー記念館：アイヌ文化研究に捧げた宣教師の足跡

バチェラー記念館は、札幌市中央区の北海道大学植物園内にひっそりと佇む西洋館です。この建物は、アイヌ文化の研究と伝道に生涯を捧げたイギリス人宣教師ジョン・バチェラー（John Batchelor, 1854年 - 1944年）の旧邸宅であり、彼の業績を記念して一般公開こそされていないものの、収蔵庫として大切に利用されています。

バチェラー記念館の概要

1898年、元々北海道庁裏にあった北海道大学植物園内にバチェラーの自邸として建てられました。当時としては非常にモダンな西洋式建築で、上下開閉窓や集合煙突を備えた木造二階建ての邸宅は、周囲の景観の中でも目を引く存在だったと考えられます。

幾度かの移築を経て、現在は植物園内の収蔵庫として活用されています。内部にはバチェラーの生涯や業績を紹介する記念室が設けられていますが、残念ながら一般公開はされていません。しかし、その外観は、明治期の札幌における西洋文化の受容を示す貴重な遺構として、私たちに当時の面影を伝えてくれます。2000年には登録有形文化財に登録されました。

バチェラー記念館の歴史

バチェラー記念館の歴史は、ジョン・バチェラーが札幌で宣教活動を開始した1892年に遡ります。

1892年（明治25年）: ジョン・バチェラーが札幌市北3条西7丁目に自宅を構える。
1898年（明治31年）: 同地に新邸を建設。
1905年（明治38年）: 移築（詳細不明）。
1940年（昭和15年）: バチェラーが日本を離れる。
1940年（昭和15年）～1953年: バチラー学園が所有。
1941年（昭和16年）: 未粉澱粉会社に賃貸。
1942年（昭和17年）～1952年: 軍人援護会に賃貸。
1953年（昭和28年）: 北海道が所有。
1962年（昭和37年）: 北海道大学に寄贈。この年に現在地に移築。
1964年（昭和39年）～1988年: 農学部付属博物館分館として北方民俗資料を展示。
1989年（平成元年）: 現在地より20m北へ移築。
2000年（平成12年）: 登録有形文化財に登録。

建築様式

バチェラー記念館は、木造2階建て、下見板張りの外壁、寄棟造鉄板葺きの屋根が特徴的な建物です。建築面積は129平方メートル。正面には、1階に出窓、2階に縦長の上げ下げ窓が左右対称に配置され、整った印象を与えます。内部は全室洋間となっており、当時のモダンな生活様式を偲ぶことができます。

観覧情報

バチェラー記念館は、北海道大学植物園内にありますが、建物自体の一般公開はされていません。植物園の入園料を支払うことで、外観を観覧できます。

観覧時間: 9:00 - 16:00
休園日: 月曜日（祝日の場合は翌日）
入園料: 高校生以上420円、小中学生300円、未就学児・北海道大学在籍者は無料

ジョン・バチェラーとアイヌ文化

ジョン・バチェラーは、1877年に来日し、以後50年以上にわたり北海道でアイヌの人々のために宣教活動を行いました。彼は、アイヌ語の研究に尽力し、アイヌ語辞典の編纂やアイヌ語による聖書の翻訳など、数多くの業績を残しました。また、医療や教育を通じてアイヌの人々の生活向上にも貢献し、「アイヌの父」として慕われました。

バチェラー記念館は、彼の功績を偲び、アイヌ文化への理解を深める上で重要な存在と言えるでしょう。

参考文献

柳原千絵子、小沢丈夫、角哲 『北海道大学農学部博物館バチェラー記念館の現況』 (北海道支部 研究報告書 No.89) p.315、日本建築学会、2016年6月
仁多見巌『アイヌの父 ジョン・バチェラー』(楡書房)、1963年4月30日発行
ジョン・バチラー、仁多見巌訳編『ジョン・バチェラーの手紙』(山本書店)、1965年12月15日発行
ジョン・バチラー著、村崎恭子校訂『ジョン・バチラー自叙伝』(北海道出版企画センター 北方新書) 2008年6月10日発行
北海道近代建築研究会編、角幸博監修『札幌の建築探訪』(北海道新聞社) p.24、1998年10月30日発行
越野武、坂田泉『近代建築ガイドブック［北海道・東北編］』（鹿島出版）p.92-93、1985年1月30日発行
社団法人日本建築学会編『総覧 日本の建築 第1巻／北海道・東北』 (株式会社日本建築学会) 1986年10月20日発行
『教育と施設』 1997-09 p.103-104 - 論文
北海道開拓記念館編『北海道開拓記念館研究紀要 第41-43号』(北海道開拓記念館) 2013-15

外部リンク

北海道大学農学部附属植物園の中にある歴史的建造物たち
北海道大学植物園
* バチェラー記念館 - 文化遺産オンライン（文化庁）

もう一度検索