ジョン・バチェラー

ジョン・バチェラーの生涯

ジョン・バチェラー（John Batchelor）は、1854年3月20日にイギリス・サセックス州アクフィールドで生まれました。彼は11人兄弟のうちの6番目として育ち、初めは庭師として働いていました。しかし、インドでの宣教活動を行なう宣教師の影響を受け、東洋での伝道に対する志を抱くようになりました。イギリス教会宣教会（CMS）に加入し、1876年には香港のセント・ポール学院に入学しますが、香港の厳しい気候により体調を崩し、マラリアにかかりました。

アイヌとの出会い

1877年、バチェラーは静養のため香港を後にし、日本の横浜及び東京を経て、気候がイギリスに似た函館へと向かいました。そこでの伝道活動を通じて、アイヌ民族が困難な状況にあることを知り、彼らのために尽力することを決意します。1879年に函館を拠点にアイヌへの伝道活動を始め、その後、日高地方の平取を訪れ、4か月間滞在し、アイヌ語を学びました。

バチェラーは1882年に帰国した後、再び函館に戻りますが、1884年には東京でウォルター・アンデレスの妹であるルイザと結婚します。しかし、彼が和人との対立に苦しむことになります。1885年、バチェラーは新しいパスポートの申請を却下され、裁判の結果、無罪となりますが、政府の役人には「アイヌ語の存続を望めば、逆に日本当局は消失を望んでいる」との厳しい指摘を受けました。彼のアイヌ文化への取り組みは周囲からの反感を買い、平取から追放される事態に至ります。

幌別村での活動

平取から追放されたバチェラーは、幌別村（現在の登別市）に移り、アイヌの教育に力を注げるようになります。ここでは、1888年に相愛学校を設立し、アイヌ語教育を展開しました。また、アイヌが無料で治療を受けられる施療病室も1892年に開設しました。

札幌での活動

同年、バチェラーは伊藤一隆を通じて、北海道禁酒会の誘いを受け、函館を離れ札幌に移転し、アイヌ伝道の拠点を確立します。彼は自宅を利用しバイブルクラスや礼拝を行い、1892年に札幌聖公会を正式に組織します。1895年までに教会堂を建設し、アイヌに対する宗教的活動を続けます。

しかし、1900年には北海道旧土人保護法の影響で、教会でのアイヌ語の説教を中止せざるを得ない状況となりました。これ以降、アイヌ信徒の数が減少する中、彼はアイヌへの教化政策に協力的になります。1906年には養女に向井八重子を迎え、アイヌ教育に尽力し続けました。

最晩年と影響

1933年、バチェラーはその活動が評価され、勲三等瑞宝章を受章しました。彼の妻ルイザが1936年に亡くなると、彼は晩年を孤独に過ごしました。1944年、彼は故郷で息を引き取りました。

バチェラーの業績は、アイヌ文化や言語の研究に多大な影響を与え、アイヌ語訳の聖書や多くの著作を残しました。しかし、彼の言語学的アプローチには批判もあり、特にアイヌ語研究の進化とともに彼の記録や考察は再評価されています。彼のアイヌに対する視点はさまざまな意見を超えて議論の的となっており、今日でもその影響は色濃く残っています。

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