バッキンガム公

バッキンガム公爵とは

バッキンガム公爵は、かつてイギリスに存在した公爵位です。この称号は、複数の家系によって創設されており、それぞれ異なる歴史を持っています。1444年にスタッフォード家によって創設されたのを皮切りに、ヴィリアーズ家、シェフィールド家、グレンヴィル家と、計4つの異なるバッキンガム公爵位が存在しました。しかし、いずれの爵位も後継者が途絶え、現在ではその称号は使われていません。ここでは、それぞれの家系が辿った歴史と、バッキンガム公爵位の変遷について詳しく解説します。

スタッフォード家のバッキンガム公爵（1444年 - 1521年）

最初にバッキンガム公爵に叙せられたのは、第6代スタッフォード伯爵ハンフリー・スタッフォードでした。彼は幼くして伯爵位を継承し、後にヘンリー6世の側近として活躍しました。1444年、彼はバッキンガム公爵に叙爵されましたが、薔薇戦争においてランカスター派として戦い、1460年に戦死しました。

2代公爵ヘンリーは、エドワード4世に疎まれ、リチャード3世による王位簒奪を支持しました。しかし、その後ヘンリー・テューダー（後のヘンリー7世）を擁立してリチャード3世に反乱を起こし、鎮圧され処刑されました。3代公爵エドワードは、父の処刑により一時的に爵位を失いましたが、ヘンリー7世の即位後に爵位を回復しました。しかし、枢機卿トマス・ウルジーとの対立により、1521年に大逆罪で処刑され、スタッフォード家のバッキンガム公爵位は消滅しました。

ヴィリアーズ家のバッキンガム公爵（1623年 - 1687年）

次にバッキンガム公爵となったのは、ジェームズ1世の寵臣ジョージ・ヴィリアーズです。彼は急速に昇進し、1623年にバッキンガム公爵に叙されました。彼は、チャールズ1世の下でも栄進しましたが、政情不安の中、1628年に暗殺されました。

2代公爵ジョージは、清教徒革命で王党派として国外亡命し、帰国後は投獄されました。王政復古後は、チャールズ2世に登用され、政治の中枢で活躍しましたが、後に失脚しました。1687年に彼が亡くなると、ド・ルース男爵を除く全ての爵位は継承者なく廃絶しました。

シェフィールド家のバッキンガム＝ノーマンビー公爵（1703年 - 1735年）

ジョン・シェフィールドは、アン女王に重用され、1703年にバッキンガム＝ノーマンビー公爵に叙爵されました。彼は、バッキンガム宮殿の前身であるバッキンガム・ハウスを建設した人物としても知られています。

初代公の死後、唯一の嫡出子ジョンが爵位を継承しましたが、若くして子供を残さずに死去したため、全ての爵位が廃絶しました。バッキンガム・ハウスは、非嫡出子である異母兄チャールズ・ハーバート・シェフィールドに相続され、後にジョージ3世に売却されました。

グレンヴィル家のバッキンガム＝シャンドス公爵（1822年 - 1889年）

リチャード・プランタジネット・キャンベル・テンプル＝ニュージェント＝ブリッジス＝シャンドス＝グレンヴィルは、1822年にバッキンガム＝シャンドス公爵に叙爵されました。彼は、シャンドス公爵家の血を引く人物で、父の死後、複数の爵位を継承しました。

2代公爵リチャード、3代公爵リチャードと爵位は継承されましたが、3代公爵に男子がいなかったため、バッキンガム＝シャンドス公爵位を含む多くの爵位が廃絶しました。しかし、一部の爵位は特別継承の規定により、親族に引き継がれました。

各家の歴代当主

バッキンガム公（スタッフォード家、1444年創設）

初代：ハンフリー・スタッフォード
2代：ヘンリー・スタッフォード
3代：エドワード・スタッフォード

バッキンガム公（ヴィリアーズ家、1623年創設）

初代：ジョージ・ヴィリアーズ
2代：ジョージ・ヴィリアーズ

バッキンガム＝ノーマンビー公（シェフィールド家、1703年創設）

初代：ジョン・シェフィールド
2代：ジョン・シェフィールド

バッキンガム＝シャンドス公（グレンヴィル家、1822年創設）

初代：リチャード・プランタジネット・キャンベル・テンプル＝ニュージェント＝ブリッジス＝シャンドス＝グレンヴィル
2代：リチャード・プランタジネット・テンプル＝ニュージェント＝ブリッジス＝シャンドス＝グレンヴィル
3代：リチャード・プランタジネット・キャンベル・テンプル＝ニュージェント＝ブリッジス＝シャンドス＝グレンヴィル

まとめ

バッキンガム公爵は、それぞれの家系が辿った歴史の中で、様々な出来事に翻弄され、その栄華は長くは続きませんでした。しかし、彼らの足跡は、英国の歴史の中で重要な役割を果たし、今日にも語り継がれています。

もう一度検索