トマス・ウルジー

トマス・ウルジーについての詳細

トマス・ウルジー（1475年 - 1530年）は、イングランドの聖職者および政治家で、一般にはウルジー枢機卿として知られています。彼はヘンリー8世の治世初期において特に重要な役割を果たし、外交や内政において注目すべき影響を及ぼしました。ウルジーの音声表記はウォルズィーに近いとされています。

生涯と王の側近としての抜擢

ウルジーはイングランドのサフォークに生まれ、地元のグラマースクールとオックスフォード大学のモードリン・カレッジで教育を受けました。1498年には聖職者の資格を取得し、その後は貴族たちと関係を築きながら、様々な聖職を歴任しました。1507年にイングランド王ヘンリー7世から王室礼拝堂付き司祭に任命され、外交使節としての仕事も行いましたが、当時の慎重な王からは警戒され、昇進は得られませんでした。

しかし、1509年にヘンリー8世が即位した後、ウルジーはその秘書として抜擢され、外交および内政の要職に就きます。また、1511年には枢密顧問官に就任し、王の信頼を獲得しました。1513年にはヘンリー8世のフランス遠征において重要な役割を果たし、トゥルネーの司教やヨーク大司教にも任命され、収入も増加しました。1521年にはローマ教皇レオ10世からの推薦で枢機卿となり、教皇特使としての権限を持つこととなり、これにより聖俗両方の権力を掌握しました。

外交と内政の改革

ウルジーの外交政策は、ヨーロッパの調停者としてイングランドの国際的地位を高めることを目指していました。1518年に締結されたロンドン条約は、その一例であり、多くの国との関係を強化することに成功しました。しかし、彼の外交方針は次第に困難を抱えることになります。1519年の神聖ローマ皇帝選挙やフランスとの関係の変化が影響を及ぼしました。

内政においても、ウルジーは新たな税制を導入し財政改革を進めましたが、その結果として苦境に立たされることも多く、特に新税の徴収に対する反発を受けました。また、司法権の強化や囲い込み問題の調査にも取り組み、教会の改革も試みましたが、その改革は不完全であり、多くの批判を受けることとなりました。彼の決定は国民感情に影響を及ぼし、特に反聖職者感情の高まりを招く要因にもなりました。

離婚問題とその失敗

ウルジーの政治生命を揺るがす事態が、ヘンリー8世の離婚問題の処理にありました。王と王妃キャサリン・オブ・アラゴンとの離婚に関して、教皇から期待された支援が得られなかったことで、ウルジーの地位は脅かされることになります。彼はその権限を使用して離婚裁判を主宰しましたが、キャサリンの抵抗や教皇の圧力により、離婚は達成されず、結果としてウルジーは王からの信頼を失います。

この一連の事件は彼にとって致命的であり、1529年の裁判失敗を契機に彼は失脚します。その後、彼はすべての官位と財産を剥奪され、最終的には教皇庁との私通の嫌疑で逮捕される運命を辿ります。病気によって余生を過ごす中で政治活動を再開しますが、それも王の猜疑を招き、最終的にはロンドンへ送還される途中で亡くなりました。

ウルジーの影響と評価

ウルジーはその生涯を通じて、イングランドの政治と教会に対して大きな影響を与えた人物です。彼の急速な昇進とその後の没落は、権力の儚さを示す一方で、権力の推移に関する重要な教訓を残しています。庶子を持ち、豪華な生活を好んだ彼は、経済的な側面でも目を引く存在でしたが、清貧を求める反聖職者感情を呼び起こしたことで政治的な背景も複雑化しました。後年、彼の業績は様々な形で評価され続けており、近代におけるイギリス史において忘れられない人物となっています。

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