バッキー白片

バッキー白片（本名：白片 力）は、昭和期における日本のハワイアン音楽の第一人者であり、傑出したスティール・ギター奏者、作曲家です。楽団「バッキー白片とアロハ・ハワイアンズ」を率い、南国の調べを日本に広めました。

1912年（明治45年）4月16日、ハワイ準州ホノルルに日系一世の子として誕生しました。マッキンレー高校、ハワイ大学医学部で学びながら、音楽への深い情熱を育みました。ホノルル・シンフォニー・オーケストラへの参加も、音楽家としての素養を培う一助となりました。

1933年（昭和8年）、彼は大学を一年間休学してアロハ・ハワイアントリオを結成し、日本の土を踏みます。この来日中に「アカカの滝」「フイ・エ」の録音を行い、日本にハワイアン音楽を紹介する先駆けとなりました。1935年の大学卒業後、1937年（昭和12年）には日本に帰化し、結婚を機に東京へ移住、本格的な音楽活動を展開します。

日本での活動は順調に進み、1939年（昭和14年）には自作曲「竹の橋の下」「フラの天国」を発表。翌年には日本青年館で「アロハ・ハワイアンズ」の名での発表会を開催し、楽団としての基盤を築きました。しかし、第二次世界大戦の激化とともに、ハワイアン音楽は敵性音楽と見なされ、活動は困難を極めます。本名である「白片力」名義での演奏を強いられるなど、不遇の時代を強いられました。戦後、日本の音楽シーンが復興する中で、白片氏は1947年（昭和22年）に改めて「バッキー白片とアロハ・ハワイアンズ」を結成。リーダーとして楽団を率いる傍ら、和田弘やエセル中田といった、後に日本のハワイアン界を担う多くの逸材を育て上げました。

楽団は人気を博し、1959年（昭和34年）に発表した「南国の夜」は大きなヒットとなりました。スティール・ギター奏者としての卓越した技量に加え、作曲家としても才能を発揮し、石原裕次郎のヒット曲「俺はお前に弱いんだ」のほか、「ささやきのタンゴ」「さすらい」「白樺の湖」といった名曲を数多く生み出しました。

日本のハワイアン音楽界における長年の功績が称えられ、1988年（昭和63年）には勲四等瑞宝章が授与されました。晩年まで精力的に活動を続け、1994年（平成6年）7月13日、心不全のため82歳でその生涯を終えました。彼の築き上げた音楽世界は、息子の白片健氏が「バッキー白片Jr.」として継承しており、今なお多くのファンに親しまれています。

その活動は、数多くのレコード作品に記録されています。SP盤、EP盤、LPアルバムと時代に合わせて膨大な数の音源をリリースし、ハワイアンの古典から日本の歌謡曲、ジャズ、ラテン、クラシック、民謡に至るまで、多様なジャンルの楽曲をスチールギターの美しい音色で表現しました。これらの録音は、日本のポピュラー音楽史における貴重な財産です。

バッキー白片は、日本のハワイアン音楽の草分けであり、その魅力を広く浸透させた偉大な音楽家です。彼の温かい音色と卓越した演奏技術、そして作曲家としての才能は、日本の音楽シーンに忘れがたい足跡を残しました。

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