バット・シリアスリー

バット・シリアスリー (...But Seriously)

『バット・シリアスリー (...But Seriously)』 は、イギリスのミュージシャン、フィル・コリンズによって1989年に発表されたソロ・キャリア通算4作目となるオリジナル・アルバムです。この作品は、それまでの彼が主に扱ってきた個人的な感情や恋愛といった主題に加え、より広範な社会問題に深く踏み込んだメッセージ性の強い楽曲が多数収められている点が大きな特徴です。また、著名なギタリストであるエリック・クラプトンとの共演が実現するなど、音楽的な面でも新たな試みが積極的に取り入れられました。

作品の背景と成功

前作までで既に商業的な大成功を収めていたフィル・コリンズですが、本作ではその勢いをさらに加速させ、特に本国イギリスでは、自身のキャリアにおいて最高のセールス記録を樹立するほどの成功を収めました。世界各国でもチャートの首位を獲得するなど、彼の代表作の一つとして広く認知されています。

2016年には、アルバム発表から四半世紀以上を経て、オリジナル版のジャケット写真を刷新し、新たにリマスタリングが施された デラックス・エディション が発売され、再び注目を集めました。

収録曲

オリジナル版（および日本でのリマスター版）の収録曲は以下の通りです。

1. ハング・イン・ロング・イナフ (Hang in Long Enough) – 4:44
2. 悲しみのザッツ・ザ・ウェイ (That's Just the Way It Is) – 5:20
3. ドゥー・ユー・リメンバー (Do You Remember?) – 4:36
4. ウェイ・トゥ・ヘヴン (Something Happened on the Way to Heaven) – 4:12
5. カラーズ (Colours) – 8:51
6. 雨にお願い (I Wish It Would Rain Down) – 5:28
7. アナザー・デイ・イン・パラダイス (Another Day in Paradise) – 5:22
8. ヒート・オン・ザ・ストリート (Heat on the Street) – 3:51
9. オール・オブ・マイ・ライフ (All of My Life) – 5:36
10. 土曜の夜と日曜の朝 (Saturday Night and Sunday Morning) – 1:26
11. ファーザー・トゥ・サン (Father to Son) – 3:28
12. ウェイ・トゥ・マイ・ハート (Find a Way to My Heart) – 6:08

特筆すべき楽曲

本作には、特にその歌詞の内容やゲスト参加で注目を集めた楽曲がいくつか含まれています。

悲しみのザッツ・ザ・ウェイ (That's Just the Way It Is): 当時激化していた北アイルランド紛争という深刻な社会問題について、フィル・コリンズが自身の視点から問題提起を行った楽曲です。
カラーズ (Colours): 9分近い大作で、当時の南アフリカに存在したアパルトヘイト政策や根深い人種差別に対する強い批判が込められています。社会的な不正義への憤りが表現されています。
雨にお願い (I Wish It Would Rain Down): この曲では、世界的なギタリストであるエリック・クラプトンが参加しており、彼の個性的なギター・ソロを聴くことができます。楽曲自体もヒットを記録しました。
アナザー・デイ・イン・パラダイス (Another Day in Paradise): アメリカ国内におけるホームレスや貧困の問題に光を当てる内容の楽曲で、シングルとしても大ヒットしました。特に日本では、1991年には自動車メーカー、マツダの車種「クロノス」のテレビCMソングとしても使用され、広く知られるようになりました。
* ウェイ・トゥ・マイ・ハート (Find a Way to My Heart): この曲は、同年に公開された映画『アパッチ』（主演：ケビン・コスナー）のテーマ曲としても使用されています。

オリジナル版と日本国内盤の違い

本国イギリスで発売されたオリジナル版と、リリース当初に日本国内で販売された盤とでは、いくつか相違点が見られました。具体的には、オリジナル版に収められていた「Saturday Night And Sunday Morning」と「Heat on the Street」の2曲が国内盤ではカットされており、収録曲全体の並び順も変更されていました。しかし、2005年以降に日本で再発売されたリマスター盤においては、こうした国内独自の編集は解消され、オリジナル版に準じた収録内容および曲順に統一されています。

『バット・シリアスリー』は、フィル・コリンズのキャリアにおいて、商業的な成功と同時に、アーティストとしての社会的なメッセージ発信を両立させた重要な作品と言えるでしょう。

もう一度検索