バッドランズ国立公園

バッドランズ国立公園：荒涼とした大地の絶景

アメリカ合衆国サウスダコタ州南西部に位置するバッドランズ国立公園は、約924平方キロメートルにも及ぶ広大な保護区です。この公園は、プレーリーと呼ばれる大平原地帯の中に、荒々しい岩山や丘がそびえ立つ独特な景観で知られています。バッドランズという名前は、スー族の言葉で「悪い土地」を意味する「マコシカ」が由来で、その名の通り、生物が生活するには厳しい環境です。しかし、この厳しい環境が、他に類を見ない景観美を生み出しています。

奇妙な地形と生態系

バッドランズの地形は、約50万年という長い年月をかけて水と風の浸食作用によって形成されました。この浸食によって、無数の崖や峡谷、そそり立つ尖峰、根元が細く削られた奇岩、平坦な岩のテーブルなど、特徴的な景観が広がっています。この地で生き残る生物は限られていますが、プレーリーにはバッファロー（アメリカバイソン）が生息しており、周辺の草原ではプレーリードッグ、コヨーテ、プロングホーンなどの野生動物が見られます。

スー族との歴史

バッドランズ国立公園は、もともとオグララ・スー族の保留地でした。特に南地区は、ストロングホールド・テーブル付近がスー族の聖地として崇められていました。1868年の「第二次ララミー砦条約」で、アメリカ合衆国はバッドランズ一帯を「永久にスー族のもの」と保証しましたが、1889年にこの条約は破棄され、バッドランズは一方的に国立公園に組み入れられてしまいました。この条約破棄は、1980年に合衆国最高裁判所によって違法と判決されましたが、現在でもこの地域は合衆国による不法占拠状態が続いています。

ゴーストダンスとレッド・パワー運動

19世紀末には、スー族の人々がバッファローや死者の魂を蘇らせる儀式「ゴーストダンス」を盛んに行いました。1890年に最後のゴーストダンスが行われた後、合衆国によってこの儀式は禁止されましたが、1960年代からの「レッド・パワー運動」によって儀式は復活しました。

化石の宝庫

バッドランズは、化石の宝庫としても知られています。特に、3400万年前から2500万年前の漸新世の化石が多数発見されており、ジョセフ・ライディー、オスニアル・マーシュ、ファーディント・バンデビーア・ヘイデンなどの著名な研究者によって数千点の化石が発見されています。スー族の神話では、この地で見つかる化石は、怪獣「ウンクテギラ」の一部だとされています。この地域は、1939年に国立記念物に指定され、化石層を保護するため1978年に国立公園に指定されました。

バッファローとの共生

バッファローは、かつてインディアンたちの生活を支える重要な存在でした。1992年には「部族相互野牛協同組合（ITBC）」が設立され、各地の国立公園で余剰となったバッファローを引き取り、彼らの保留地で繁殖させる試みが始まりました。2007年には、バッドランズ国立公園からオグララ・スー族へ33頭のバッファローが寄贈され、部族のバッファロー牧場で飼育されています。

バッドランズ国立公園へのアクセス

バッドランズ国立公園は、ノースユニットとサウスユニットに分かれており、ノースユニットは道路が整備されているため比較的アクセスしやすいです。一方、サウスユニットは未開拓の自然が残っており、クニー・テーブル、ストロングホールド・テーブル、シープマウンテン・テーブルなどの台地を見ることができます。公園へのアクセスは、ラピッドシティから車で約1時間、またはノースユニット近くのウォールという町からが便利です。

有名なポイント

バッドランズ国立公園には、シーダーパス、ビッグフットパス、イエローマウンド、ピナクルス展望台、プレーリードッグタウン、化石の道、ビッグ・ピッグ・ディグの発掘現場など、多くの見どころがあります。これらのポイントを巡りながら、バッドランズの多様な魅力を楽しむことができます。

バッドランズ国立公園は、その独特な景観、歴史、そして豊かな自然が織りなす、他に類を見ない魅力的な場所です。

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