バッド・ウルフ

『ドクター・フー』シリーズ1第12話「バッド・ウルフ」：詳細解説

「バッド・ウルフ」は、2005年6月11日にBBC Oneで放送された、イギリスのSFドラマ『ドクター・フー』シリーズ1の第12話です。翌週放送の第13話「わかれ道」と二部作を構成しており、シリーズ全体のクライマックスを担う重要なエピソードとなっています。

物語の舞台は、シリーズ1第9話「宇宙ステーションの悪魔」から100年後、2005年の地球です。9代目ドクター、ローズ・タイラー、そしてキャプテン・ジャック・ハークネスは、謎の「コントローラー」によって、殺人ゲーム番組が放送されているサテライト5という放送局に送り込まれます。彼らはそこで、コントローラーの背後に潜む恐るべきダーレクの陰謀に巻き込まれ、壮絶な戦いを繰り広げます。

制作秘話

当初、「バッド・ウルフ」は「わかれ道」の前編として「The Parting of the Ways (Part 1)」というタイトルで宣伝されていました。アンドロイドや未来版「ウィーケスト・リンク」といった本作の主要なアイデアは、シリーズの復活を企画していたラッセル・T・デイヴィスが2000年から2001年にかけて開かれた会議で考案されたものです。特に、巨大なスクリーンに映し出された映像から着想を得たといいます。

制作過程では、いくつかのエピソードが存在します。例えば、当初はジャック・ハークネスの臀部を映すシーンが予定されていましたが、BBCの編集方針により却下されました。また、ダーレク艦隊が登場する場面では、ヘブライ語で「何が起きている？」と歌うコーラスが使用されているなど、細部に渡るこだわりが見られます。さらに、デイヴィスは後のシリーズの伏線となる言葉をアナグラムとして劇中に隠しており、その一つがスピンオフシリーズ『秘密情報部トーチウッド』のタイトルにもなっている「トーチウッド (Torchwood)」です。これは『ドクター・フー (Doctor Who)』のアナグラムでもあります。

キャスティング

本作には、過去シリーズにも出演した俳優が起用されています。女性番組スタッフを演じたニシャ・ネイヤーは、1987年のクラシックシリーズ『Paradise Towers』にも出演しており、新旧両シリーズに出演した数少ない俳優の一人となりました。また、コントローラー役のマーサ・コープはその後、オーディオドラマで重要な役割を演じているなど、本作をきっかけに活躍の場を広げています。その他のキャストも、後のオーディオドラマシリーズで活躍するなど、本作が多くの俳優のキャリアに影響を与えたことがわかります。

アン・ロビンソンはアンドロイドの声優としてオファーされましたが、当初は断られるだろうと制作陣は予想していました。しかし、彼女はオファーを受け入れたため、既に収録が済んでいた別の声優の吹き替えは使用されませんでした。

連続性

「バッド・ウルフ」という言葉は、「マネキンウォーズ」を除くシリーズ1のすべてのエピソードに登場するという、シリーズ全体における重要なキーワードとなっています。

放送と評価

「バッド・ウルフ」はイギリスで681万人の視聴者数を記録し、シリーズ1の中では最も低い視聴率となりました。日本では、2006年11月21日にNHK衛星第2テレビジョンで初放送され、その後地上波でも放送されました。

批評家の評価は概ね高く、『デジタル・スパイ』誌、『gizmodo』、そして『SFX』誌など、多くのメディアが本作を高く評価しています。特に、クライマックスにおける衝撃的な展開と、9代目ドクターの感情表現は絶賛されており、いくつかのメディアでは『ドクター・フー』史上最高のクリフハンガーの一つとして挙げられています。一方で、大衆文化の風刺については賛否両論があるようです。

まとめ

「バッド・ウルフ」は、巧みな構成、伏線、そして衝撃的な結末によって、視聴者を魅了する傑作エピソードです。シリーズ全体のストーリーに大きく貢献すると同時に、制作秘話やキャスティング、そして高い評価など、様々な側面から考察することで、『ドクター・フー』という作品の魅力をより深く理解することができるでしょう。

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