バトゥル

バトゥルの起源と清朝における発展

バトゥル（巴図魯）は満洲語で「勇者」を意味し、その起源は中世モンゴル語の『バアトル』にあります。この言葉は、清朝の満洲人において栄誉を表す称号として広く使われました。バトゥルは、戦士としての勇気や力量を象徴しており、当時の社会における武官の名誉を強調するものでした。

清朝におけるバトゥル称号の用法

清朝ではバトゥル称号には主に2つの形態が存在しました。最初の形態は、単に「バトゥル」という称号が与えられるものであり、これが最も基本的な形です。もうひとつは、さらに付加的な修飾語が前に付く形で、例えば満洲語や漢文の言葉が使われることがあります。このようにして、称号はより具体的な意味や背景を持たせられました。

バトゥルの称号は清朝の初期には世襲制であり、歴史的には特定の氏族や血筋がこの称号を受け継いでいました。例えば、多羅郡王は「ドロイ・バトゥル・ギュン・ワン」という形で表現されました。しかし、康熙帝の治世以降、次第にこのような使い方は減少していきました。

バトゥル称号の授与の歴史

清朝政府は、このバトゥル称号を厳密に管理しており、史料によるとヌルハチの天命年間から咸豊帝の即位までの間に、実際にこの称号を与えられたのはわずか33人とされています。特に、この称号は満洲人やモンゴル人の武官に特有のものであり、初めて漢人に与えられたのは嘉慶年間のことでした。この段階では、バトゥルは特別な名誉を持つ称号として、武官たちの中で特に高く評価されていました。

称号の乱発とその影響

しかし、咸豊年間に入ると、状況は一変します。これまでの厳しい管理から転換が起こり、バトゥルの称号が乱発されるようになりました。元々、武官にのみ与えられていた名誉称号が文官にも与えられるようになり、これにより称号の価値が低下してしまいます。戦争のたびに数十人が一度に称号を得ることもあり、さらには外国人に対してもこの名誉称号が付与される場面が見られるようになりました。

このようにしてバトゥル称号は清朝の歴史の中で、時代とともにその意味合いや価値が大きく変化していきました。当初の名誉から、称号としての重みを失っていく様子がうかがえます。バトゥルとは単なる言葉以上に、歴史の変遷を反映した興味深い概念の一つであることは間違いありません。

もう一度検索