バハオラ

バハオラ（アラビア語で「神の栄光」を意味する尊称）は、1817年11月12日にペルシャ（現在のイラン）のテヘランで、ミールザー・ホセイン・アリーとして生を受けました。ガージャール朝に仕える高官の家に生まれ、父は高い地位の大臣でした。幼い頃からその非凡な英知と学識で王宮内に名を知られていましたが、22歳で父を亡くした後、家督を継がず、病に苦しむ人々や貧しい人々への支援に専念する生活を選びました。

1844年、商人であったセイイェド・アリー・モハンマド、尊称「バーブ」によってバーブ教が興されると、バハオラはすぐにその教えを受け入れ、熱心な信徒となりました。バーブは、創造主がモーセ、イエス、ムハンマドに続いて新たな預言者を遣わすと宣言し、長らく待ち望まれてきた世界の平和、調和、正義をもたらす新しい時代の到来を告げました。しかし、当時のイスラム教体制はバーブの主張を異端と見なし、激しい弾圧を加え、イラン政府によって数千人のバーブ教徒が処刑される事態となりました。政府によるバーブ教徒への迫害が始まると、バハオラも逮捕され、投獄されます。この獄中での経験中に、彼は最初の霊的な啓示を受けたとされています。

1863年、バハオラは家族と共にイラクのバグダード（当時はオスマン帝国領）へ追放され、さらにイスタンブール、エディルネへと移送されることになります。このバグダード滞在中の1863年4月、レズワンの園と呼ばれる場所で、バハオラは自身がバーブが預言した存在、「神が現し給う者」であると宣言しました。彼は「バハオラ」という尊称を名乗り、自らが受けた神からの啓示に基づき著述した『最も神聖なる書』（アクダス）を教典とする新しい宗教、バハイ信教を創始しました。この時、バハオラの異母弟であるミールザー・ヤヒヤーは、兄の地位を認めずに訣別しましたが、バーブ教の信徒の大多数はバハオラの教えを受け入れ、バハイ教徒となりました。

1868年、バハオラはオスマン帝国政府により、パレスチナのアッカ（現在のイスラエル、アクレ）に流刑され、厳重な監獄に投じられました。後にアッカの監獄がトルコ政府によって砦として使用されることになったため釈放されましたが、その後もアッカ周辺に居住し、1892年5月29日に近郊のバージにある邸宅でその生涯を終えました。バハオラが晩年を過ごしたバージの邸宅は現在も残り、彼が眠るアッカの地は、バハイ教徒にとって最も神聖な巡礼地となっています。

バハオラの教えの核心は、神、宗教、そして人類全体の一体性にあります。他のすべての一神教と同様に、神はすべての被造物の唯一の源であると説かれています。また、宗教は神の直接的な介入である「神の顕現」を通じて、時代の必要に応じて定期的に更新されるものであると教えています。バハオラは、過去の主要な世界の宗教をもたらした預言者たち（モーセ、イエス、ムハンマドなど）は、皆同じ一つの真理を異なる時代と文化に合わせて伝えた偉大な教育者であり、「神の顕現者」であると説明しています。そして、バハオラ自身が、人類から人種的な差別や国家主義を根絶し、全地球国家を調和と和合へと導く使命を帯びた、これらの教育者の最新の顕現者であると位置づけられています。

バハオラの教えには、国家間の紛争を公正に裁定するための世界的な法廷の設立や、地球上のすべての人々が意思疎通できるようになるための補助語（国際共通語）の必要性なども含まれています。さらに、神の啓示の更新サイクルは約千年ごとに続くとされ、次の「神の顕現」は西暦2852年よりも後に現れるであろうと預言されています。

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