バリー・リンドン

『バリー・リンドン』の概要

『バリー・リンドン』（Barry Lyndon）は、1975年に公開されたイギリス・アメリカの合作の歴史映画です。スタンリー・キューブリック監督によるこの作品は、ウィリアム・メイクピース・サッカレーの1844年の小説『The Luck of Barry Lyndon』を原作としており、18世紀ヨーロッパを舞台に主人公の運命を描いています。映画はアカデミー賞において撮影賞、美術賞、衣裳デザイン賞、編曲賞の4部門を受賞し、高い評価を得ましたが、興行的には厳しい状況が続きました。

ストーリーの概要

第1部：レドモンド・バリーの出発

物語は、アイルランドの農家に生まれた主人公レドモンド・バリーが、困難な運命を経て「バリー・リンドン」としての生活を手に入れる過程に焦点を当てています。バリーは父親を決闘によって失い、母親の厳しい育てのもと成長します。彼の初恋の相手である従姉のノラとの関係が、イギリス軍のジョン・クイン大尉との決闘を経て複雑に展開します。

バリーは村を離れ、軍隊へ入隊し、七年戦争に従軍することになります。そこで軍の生活に苦しむ一方、新たな人生を求めて脱走を決意し、プロイセン軍に身を隠して入隊するなど、様々な冒険を経験します。

第2部：バリー・リンドンの栄光とその後

バリーは、病弱な貴族チャールズ・リンドン卿の妻レディー・リンドンに心を惹かれ、彼女との結婚を果たします。幸運にも爵位を得たバリーですが、彼の放蕩生活が家計に多大な影響を及ぼし、家族間の亀裂が生まれ、彼自身も様々な不運に見舞われます。

バリーの子供が事故で亡くなるなど、数々の悲劇が続き、彼の生活もさらに混乱に陥ります。衰退する家計の中で、家族の悲劇や嫉妬が引き金となり、リンドン家は次第に崩壊していきます。最終的に、バリーは大怪我を負い、家を離れることを余儀なくされ、落ちぶれた賭博師としての人生を送ることになります。

作品の特徴

本作は、キューブリックの独自のビジュアルスタイルとストーリーテリングが際立つ作品であり、時代考証や技術においても彼の徹底したこだわりが見受けられます。特に撮影においては、ロウソクの明かりのみを使用した映像が特徴的であり、そのために特別なレンズが開発されるなどの努力がなされました。

キューブリックは当初、ナポレオンをテーマにした映画を考えていましたが、予算の制限により『バリー・リンドン』を製作することに決定しました。その結果、18世紀の雰囲気を見事に再現した映像作品となり、現在においても多くの人々に影響を与え続けています。

音楽の役割

音楽にも特別な配慮がなされており、バロック音楽や古典派音楽が多く使用され、作品の時代性を引き立てています。キューブリックは、ロマンティックな要素を持つ音楽を求め、歴史的背景に基づく音楽を選定しました。

結論

『バリー・リンドン』は、成功と失敗、愛と憎しみ、栄光と悲劇といった人間のドラマを描いた作品であり、キューブリック監督の傑作として歴史に名を刻んでいます。

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